5月28日開催 高柳俊一名誉教授記念模擬授業ご報告

高柳俊一名誉教授記念模擬授業「『薔薇の名前』の7日間」

 

 去る528日(日)、オール・ソフィアンズ・デーで賑わうキャンパスの一室で、40名ほどの聴衆を前に、高柳俊一名誉教授記念模擬授業「『薔薇の名前』の7日間」が行われました。ウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』にまつわる高柳先生の講義の論点は以下の2点でした。一つは、小説にフランシスコ会修道士バスカヴィルのウィリアムとベネディクト会の見習い修道士メルクのアドソが登場することから、ベネディクト修道会とフランシスコ修道会の違いについて、もう一つは、この小説が7日間の出来事として7章に分けられていることの意味についてでした。

 一点目に関して、高柳先生は、修道会の成り立ちについてお話しになりました。そもそも教会制度は街で始まったけれども、世俗化を嫌った敬虔な信者は、荒れ地での生活を望んで修道会を設立した。こうしてベネディクト会修道会が発生したが、富が集中し、腐敗が見られたので、さらなる改革を求めてフランシスコ会やドミニコ会といった托鉢修道会が誕生した。修道士には貴族の子弟が多く、彼らは農耕よりも学問を好んだため、修道院では写本が盛んになった。『薔薇の名前』も、アリストテレスの「喜劇論」を読みたい、書き写したいという「知識への欲望」が殺人事件を引き起こしたのである、と高柳先生はお話しされました。

二点目に関して高柳先生は、「神の創造の7日間」との関連をお話しになりました。旧約聖書によると、「7日目に世界は終わる」とありますが、『薔薇の名前』も、春の日中で小説が始まり、夜の暗闇、火事の場面で小説が終わる、というように聖書を踏まえた構成になっているとのことです。

まとめとして高柳先生は、『薔薇の名前』を通じてエーコが伝えたかったことは、「文化の確立には根気がいる」ことである、つまり「古典文化に戻る、ルネッサンス、文明の再生である」と述べられました。

 最後に高柳先生は、もう一つの修道会、イエズス会について言及されました。イエズス会は托鉢修道会の流れを汲むけれども、ローマ中心で中央集権的な制度を取り、秩序を守るのが特徴であるとのことでした。

 こうして一時間ほどお話をされた後で、高柳先生は「そろそろいいでしょう」とニヤリと笑って講義を締めくくられました。

 その後の質疑応答で『薔薇の名前』の映画版への感想を求められると、高柳先生は「小説とは別のジャンルで物足りない」とお答えになられ、さらに長年かけて編纂された『新カトリック大辞典』の完成をご報告なさいました。

 その後、和やかな懇親会で高柳先生との学生時代の思い出話に花が咲き、英文科同窓会は幕を閉じました。

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