2016年6月16日(木)18:30から、法学部同窓会(SLA)はセミナー「法と実務の最前線」第7回「認知症患者の事故とその責任」を行いました(2号館13階法学部大会議室)。
講師は伊藤栄寿上智大学法学部准教授。同准教授は冒頭、今年(2016年)3月1日に最高裁判所が示した「は認知症になった高齢者が起こした鉄道事故についてJR東海の損害賠償請求を棄却、その家族の責任を否定した」判決文を紹介。
その後は、私たちの身近なこの問題について、参加者全員がディスカッションに参加する中で議論が進みました。伊藤准教授が議論にあたって提起したのは①加害者家族として考える、②被害者として考える、③制度として考える、の3つの視点。
それぞれ①については、どこまで介護をすれば責任を免れるのか、介護をしなければ責任を逃れるのか、②については、なぜ誰にも損害賠償請求ができないのか、加害者が資産家であった場合、請求できないのは不当ではないか(加害者遺族は、責任を負わず相続をできるコツになる)、③については、責任保険の導入、高齢化社会における認知症患者、成年後見制度のあり方など、を示しました。
ディスカッションでは本件裁判での焦点となった民法709条、714条についての適用にとどまらず、参加者からは国の政策や保険、介護のあり方まで幅広い意見が寄せられ、関心の高さが伺い知れるセミナーとなりました。参加者からは、「今回の最高裁判決は高齢化社会への国としての賠償責任制度改革に一石を投じたものとなればよい」などの声も寄せられました。
そして、セミナー終了後は恒例の懇親会。ここでも、講師を含め幅広い意見を聞くことができました。