■TOKYO2020選手村の開村
振り返ればTOKYO2020大会期間中は、まさに選手村一色の生活でした。
大会スポンサー企業で、2014年から7年間という長期間にわたって選手村の取組みを続けてきたのですが、特に1年延期を経ての開村直前の準備期間は本当に長く感じました。
コロナ禍での大会開催については多方面から色んな声が聞こえてきましたが、関係者・スタッフは迫ってくる開村予定日に向けて、とにかく作業を進めるしかありません。一方で大会関連行事が次々と中止となる中で、ギリギリまで「本当に大会開催されるのか?選手を受入れ出来るのか?」という不安も正直ありました。
そんな中で大掛かりなセレモニーもなく無事?開村となったのですが、開村日以降、少しずつ選手団の入村が始まると、各国の旗や垂れ幕、様々な装飾が宿泊棟に施され、街がどんどん色づいていく様を目の当たりにして、抱いていたモヤモヤとした気分も次第に吹き飛んでいきました。選手たちが村の中を練り歩き、話し声が聞こえるようになると、それまでは、「生活する人がいない、まるで眠っている」街が、TOKYO2020選手村として躍動し始めた!まさにそんな感じでした。
オリンピック開会式当日も現地で選手達がバスで移動するのを見送ったのですが、選手達の本当に楽しそうな姿を見て、「何て贅沢な光景なのだろうか。オリンピックが開催出来てほんと良かった」とスタッフ皆で感動していました。まさに至福の瞬間です。
■大会期間中について
オリンピック選手村は2021年7月13日から8月11日、パラリンピック選手村は8月17日から9月8日までといったようにそれぞれ開村期間というものがあるのですが、我々スタッフにとっては、とにかく仕事に切れ間が無いという状態です。
大会スポンサー企業のメンバーとして、選手村では本当に様々な施設・設備に携わっていたので大会中はよろず相談窓口といった感じで、まさに「選手村にいること自体が仕事」みたいな状態でした。選手村の敷地は約44haあり、例えてみると少し広さは異なりますが、毎日ディズニーランドを歩き回っているようなイメージです。日陰の少ない選手村で夏を過ごすと、すっかり現場焼け状態です。
ほとんど毎日を選手村で過ごしているのですが、選手村は選手のプライベートな空間なので、職務上以外では、選手に話しかけたりすることは出来ません。
それでも競技会場ではなかなか見ることができない、選手のリラックスした姿をみることができる場に居るというのは本当に貴重な体験です。
例えば、日本では馴染みのある「マッサージチェア」を村内に設置したところ、これが想定以上に大好評で、常に順番待ちという状態でした。リピーター含めて毎日100人以上の選手・関係者に利用してもらったのですが、体格の良い(ちょっといかつい)選手が気持ちよさげに寝落ちしている姿を初めて見ましたが、間違いなく「日本のおもてなし」に満足した瞬間だと確信しました。
マッサージチェアの利用にあたっては、事前の選手への説明や使用ごとの清掃等細かな作業が必要なのですが、ここでもスタッフ、ボランティアの方にとても丁寧に対応して頂きました。選手の中には商品を気に入って「この商品はどこで買えるのですか?」といった質問があり、自主的に某電気店HPを調べて紹介して頂いたりして、そうしたボランティアの皆さんの細かな気遣いもあって施設全体の高い評価につながっているのだと感じました。改めて感謝です。
■大会を終えて
大会が始まるまでの準備期間は、本当に長かったのですが、いざ始まるとあっという間に終ってしまったという印象です。パラリンピック閉会式に向かうバスを見送った時は、本当に泣きそうでした。ほとんどの競技が無観客となり、当初想定した、日本中「街全体が盛り上がるオリンピック・パラリンピック」ではなかったかもしれませんが、間違いなく、選手村には、これまでの大会同様に真剣に競技に取組み、選手村の生活を楽しむ選手たちの姿があったのです。そしてそんな選手村で仕事が出来たことは、本当に贅沢で幸せな体験でした。ありがとうTOKYO2020選手村!
現在は、長く濃い選手村での日々が終わり、オリパラロス状態・・・ではなく、まだ選手村現場での「後片付け」作業を継続しています。
私自身のTOKYO2020選手村は、もうしばらく続くことになりそうです。
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