2020年1月アーカイブ

同窓会の起源

――サウンディングズの半世紀――

巽 孝之

(上智大学英文学科同窓会会長)

 

 令和元年、サウンディングズ英語英米文学会が創立 50周年を迎え、それを記念して会誌Soundings 45号を刊行した。特集には現会長の舟川一彦先生の巻頭言や初代会長・徳永守儀先生の「回顧と展望」、第四代会長・小野昌先生の「サウンディングズの来し方」など、読みどころ満載だ。

   ひょっとしたら、この組織の名称が耳慣れないという方もおられるかもしれないが、少なくとも上智大学英文学科の大学院を修了し学者研究者の道を歩んだ方々でこの会を知らない人はいない。刈田元司先生、ヨゼフ・ロゲンドルフ先生を名付け親に、1969年に「サウンディングスの会」として発足、 81年には徳永守儀先生を初代会長として正式な研究会組織となり、 83年には学会へと発展した同会については、二年前に出した加藤めぐみ編集長渾身の記念出版『上智英文 90年』(彩流社、 2018年)の第二部第5章「英文学科関連学会・研究会など」のセクションでその歴史にページを割いている。そこでもわかるように、サウンディングズは現存する英文学科関連組織のうち最古のもので、その会員にとっては、これはまさに最初の英文学科同窓会としての役割を果たしていたのだ。

  上智英文には、いわゆるゼミは存在しないけれども、先輩がここまで後輩の面倒を見てくれるものかと驚くほどに、上下の関係が密である。 1970年代末の大学院時代を振り返っても、英文学研究会で小説の読書会を始めたところ、当時嘱託講師だった大先輩・青山義孝氏が鬼のシゴキ役として参加し、毎回面倒をみてくださった。院生時代にはサウンディングズの会誌への投稿をはじめ、刈田先生を囲む読書会に参加し、毎年の年末には先生方から院生まで打ち揃い、クリスマス・パーティや熱海の温泉合宿を大いに楽しんだものだ。私を含め、同会によって学者研究者への道を歩み出し、全国各地の大学で教鞭を執るようになった英語英米文学者は数多い。それが半世紀の間、途絶えることなく続いてきたことは、まさに上智英文という共同体ネットワークが緊密なだけでなく強力であったことを裏付ける。

 もちろん、現在の我々の同窓会は学者研究者ばかりではない。にもかかわらず、有志による手作りの歩みの中で、まさに先輩と後輩の関わりが復活したり新たに生じたりした奇跡は枚挙にいとまがない。令和二年にも刺激的な遭遇、創造的な交流がなされることを切に願ってやまない。