2015年8月アーカイブ

ネオソフィアンでは、2015年6月18日(木)にサイバーエージェントで人材開発本部長を務める曽山哲人さん(98英文卒)をお招きしてトークイベントを開催いたしました。曽山さんの生い立ち、仕事において大切にしていること、そして自身の人生観まで、感動あり笑いありの素晴らしい講演でした。このトークイベントはネオソフィアンにとって初めての試みでしたが上智大学の現役生、卒業生、そして一般の皆様がグループディスカッションを通じて交流することもできたイベントとなりました。

講演では大手企業での人材開発本部長という立場から、就職活動を控える学生やこれからのキャリア形成や生き方に関心のある方々に対して、大変貴重なお話を語っていただきました。その模様を2回に分けてお届けしますので、お楽しみください!


P6183190.JPG

司会: 金谷武明 (95 法法卒 / 写真中央)
アシスタント: 上田まな (仏文 在学中 / 写真左)


※今回はインタビュー編をお送りいたします。



曽山: こんばんは。今日は皆さんとお話できることを楽しみにしてまいりました。どうぞよろしくお願いします。



(一同、拍手)


金谷: ASFでもテレビ東京の大橋未歩さんと対談したのですが、今日は上智大学関連のイベントではありますが、大学の公式イベントではないので大学の講演よりも軽い感じで楽しく進めながら、色々な話を引き出そうと思います。結構人事系の方が多くいらっしゃってますが、今回は人事の話を掘り下げるのではなく、曽山さんのこれまでの人生についてネット上にもないような話を深く掘り下げられたらいいなと思います。曽山さん情報って結構ネットに色々あるんですよね。名言集までありますし(笑)。



曽山: 人の言葉を借りているだけです(笑)。



金谷: 凄くいい言葉ばかりなのでぜひみなさん調べてみてください。まずは、曽山さんの経歴をご紹介しましょう。



- 1974年神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。 
- 1998年伊勢丹に入社、紳士服配属とともに通販サイト立ち上げに参加。

- 1999年、20名程度だったサイバーエージェントに入社。 インターネット広告の営業担当として入社し、後に営業部門統括に就任。 

- 2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任、2008年から取締役を6年務め、 2014年より執行役員制度「CA18」に選任され現職。 

- 2015年に人材開発本部を新設し、人材開発本部長就任。 著書に「クリエイティブ人事」、「最強のNo.2」など。



金谷: 曽山さんのキャリアを聞いてまず面白いなあと思うのは、1社目の伊勢丹を1年で辞めているんですよね。よく、新卒で入った会社に3年は勤めろと言いますが、僕も最初の会社は3ヶ月で辞めているし、この場に限って言うと全然当てはまらないんですよね(笑)。新卒1年目の曽山さんが何を考えて1年で辞めたのかは後でお聞きしたいと思います。


曽山さんのオフィシャルな経歴は以上となりますが、追加情報があります。曽山さんは調べると良い話ばかり出てきて、以前お会いした時もほんと良い人だなぁという印象しかないんですよね。


曽山: そう見せているだけです(笑)。


金谷: でも曽山さんも人間ですからねぇ、何か裏もあるのではないか?いや、必ずあるはずと思い、極秘調査を行いました(笑)。で、調べてみたところ残念ながらそうたいして面白い裏は見つからなかったのですが、いくつか面白い情報が見つかったのでご紹介します。




意外にも実はダンサーだった!?



上田: 1番目に、実はダンスが得意。高校生のときにはダンス甲子園で全国3位になり、サイバーエージェントでもダンス部を作るなど、実はダンサーであるとの情報です。


曽山: ダンス部を作ったことを知っているのは凄いですね。私は今40歳ですが、高校2年生の時には「元気が出るテレビ」という番組がありました。その中にダンス甲子園というコンテンツがあり、全国大会が3回ありました。第3回に僕は出て、D&D(Die or Dance)という11人のチームでヒップホップを踊りました。「D&D ダンス甲子園」と検索するとYouTubeで見ることができます。円陣の真中にいる男の子が後ろから来る人を抱えようとして、その土台の人がこけそうになるのですが、それが私です。初めの15秒くらいのことです。(曽山さんのダンスはこちら=> ダンス甲子園 第3回決勝 DorD / ブログ



金谷: 最初は肩車をして旗を振るのですが、やんちゃな感じで、今の人格者みたいな感じとは違うんですよね(笑)。その人を下ろした後の動きがキレッキレです。


曽山: 昔は髪をドレッドにしたこともありましたし(見た目は)やんちゃな感じでしたねえ。




災害情報にやたら詳しい!?



上田: 2番目の情報として、実は災害についてのソーシャルでの投稿が異常に早いそうです。


曽山: 東日本大震災のときにTwitterを使って社員向けに出社判断の連絡や渋谷近辺の状況等を投稿をしていたら、フォロワーが3000人から9000人になりました。社員のご家族以外に他社の人事部の方からもフォローされました。社員を出社させるか自宅待機させるか迷っている企業が多かったなかで、サイバーエージェントの方針はこうらしい、とリツイートされていました。震災時には対策本部長になることが仕事の上で決まっていて、一時期は通信が不安定だったのでツイッターを会社の公式連絡ツールにしていました。


金谷: 仕事でやってたんですか!この情報をくれた人は、仕事でしているとは思っていないかもしれませんね(笑)。


曽山: 震度5強で対策本部を作ることになっています。確かに災害情報の発信は早いですが、趣味でしているわけではないんです(笑)。




サイバーエージェント社内では人事より司会者として有名



上田: 3番目の情報として、実はサイバーエージェント社内では人事としてよりも総会の司会の人として有名、とのこと。


曽山: 3000人以上の社員を抱える当社では、年に2回全社員が集まる表彰イベントがあり、そこでタキシードを着て司会をしています。人事は10年していますが、司会歴は12年です。タキシードはその場でしか着ないのに、8年くらいしたら擦り切れてお尻の部分に穴が空きました(笑)。


金谷: 実はこの情報は複数の人から聞いてまして、しかも、年々面白くなっていると評判らしいです(笑)。


曽山: 半年に一回、1時間だけですけどね(笑)。転職先に司会業があるので良いですね、なんて冗談を言われることもあります。



sannin.png


曽山さんの高校〜大学時代とは?



金谷: ここで少し時間は戻り、高校時代のお話を伺います。高校生の頃はどんな感じだったのですか?


曽山: 僕の出身である神奈川県立市が尾高校は学区内で2番手でした。中学3年生の時に、ダンスはカッコよくてモテそうだと思って始めました。高校入学後、ダンスは一旦やめて、実はバレーボールを始めました。TVで見た中垣内選手がカッコよくて、これはモテると思って始めましたが、意外にもネットが高い。身長はあったけれど飛べずに3ヶ月で辞めました。そして、やはりダンスをしようと思っていたところ、友人が恵比寿のダンススクールに通い始めました。行ってみたところ高校生が12-13人ほどいて、先生がチームを作ろう、ダンス甲子園に出よう、という話になって。


金谷: 先生からの勧めもあったのですね。


曽山: 先生はブレイクダンスで世界一になった人で、アメリカのアポロシアターで踊ったこともある人でした。安室奈美恵やMAXの振り付けもしていた先生です。


金谷: やんちゃな感じでダンスをしていたのではなく、真面目なダンス教室に通っていたんですね。


曽山: 真面目でした。高校2年生までずっとダンスをしていて、ダンス甲子園に出て3位になり、一度終わりにしました。国会議員として有名な山本太郎さんが出場したのは第2回です。とくに繋がりはありませんが。


金谷: ダンサー時代は大学受験を意識していたんですか?


曽山: 実は、大学に行くつもりはありませんでした。石ノ森章太郎さん原作の「ホテル」というドラマが当時放映されていて、それに影響されて高校2年のときにはホテルの専門学校に行くつもりでパンフレットも取り寄せていました。


それが、たまたま高校2年の時の英語の先生が面白くて英語教師に興味を持ち、高校3年生の時には英語の先生になれる大学に行こうと決めて、予備校に通って勉強を始めました。チューターはきれいな女性の方で、その方に英語を勉強したいと言ったら、「英語といったら上智よ。上智しかないわ。」と言うので、上智を受けるので付き合ってくださいと言いましたが、落ちて残念な結果になりました(笑)。一浪を決めましたが、その当時は踊ってばかりだったので偏差値40の科目もありました。それで寝るときとお風呂以外はずっと、トイレも食事の時も勉強し、一日18時間くらいは勉強していたと思います。



上智大学へ入学、そしてラクロスとの出会い



金谷: その"英語の先生になろうという思い"はどこに置き忘れてしまったのでしょうか(笑)。


曽山: 英文学科に入学してから半年くらいで、英語の先生じゃなくてもいいかなと思いました。授業は厳しくて週5日行かなければいけなくて、半年間真面目に通って休んだのは2コマだけでした。先生がたは年配の方が多くて、英語の先生は面白くなさそうなのでやめようと思いました。


金谷: そうなんですか(笑)。でも半年間は持ったんですね。ではその後の大学生活はどんなことをしていたのでしょうか。


曽山: 私はラクロス部に入り、4年間ラクロス漬けでした。フレッシュマンズウィークで入部しました。


金谷: 上智以外の方のために説明しますと、フレッシュマンズウィーク、通称フレマンは、新入生向の入学を歓迎しつつサークルなどの勧誘をする期間です。


曽山: 上智を選んだのはチューターの言葉もあるけれども、エスカレーター式ではなかったことも理由です。全員が受験で入ってくるので、友達もゼロから作れると思ったのです。テニスサークルを見て回りましたが、その間にアメフトやバスケやラクロスからも声をかけてもらい、迷いました。あるテニスサークルからぜひ入ってほしいと言われて、他にどこを考えているかと聞かれたので「ラクロスとか」と言ったら、素敵な女性の先輩から「ラクロスはいいわよねえ」「ラクロスの人たちはほんとうにカッコいい」と言っていました。実際にラクロス部の先輩はみな目指している視点が高く、かっこよかったのでラクロス部に入部することにしました。もちろんテニスサークルの先輩のコメントも後押ししましたが(笑)。


(一同、笑)


上田: 主将だったと聞きました。


曽山: 未経験で入り、当時はサークルでしたが、3年の時に準体育会にして副キャプテンになり、4年生のときにキャプテンになり、体育会にしました。


金谷: ラクロスも高校からしている人は少なそうですね。


曽山: そうです。やはりゼロから戦える、チャレンジャーとかベンチャー的なところが私には合うのでしょうね。実力で戦えるところで戦わないといけないという思いはありました。


金谷: 曽山さんの話を伺っていると、意外と安易に重要な決断をするわりには、続けるものはしっかりその後も続けますよねぇ(笑)。


曽山: はまったものは本気で続けるという感じ。ダンスも勉強もラクロスもはまったのですね。ただ選択は早い方だと思います。


金谷: 大学時代はラクロスで過ごしていたと。


曽山: そうです。僕にとっては、文学部というよりも上智大学ラクロス部に入ったような感じです。




いざ就活  ― 強い組織に入りたい!―



金谷: 今日は大学生も来ているので、就活の話も触れたいと思います。曽山さんは、就活ではどういった企業を受けようと考えていましたか。


曽山: 僕はラクロス部の他に、学生連盟で広報委員長をしていました。130校くらいの大学を束ねて広報活動をしていたので、広報・広告やそれに繋がるものが良いと思っていましたが、広告代理店の他にもクレジットカード、銀行、百貨店など業種を問わずNo.1を受けていました。強い組織を作っている会社に入りたかったのです。


金谷: 曽山さんらしい良い言葉ですねぇ。


曽山: 部活でキャプテンをしていましたが、当時は弱かったので、強い組織を作れる会社で学びたいと考えたのです。伊勢丹の他にもいくつか内定をもらいましたが、伊勢丹が一番、先輩がかっこよかった。男らしい人がいて、今度も決して女性じゃなくて(笑)。


伊勢丹の面接で何を言ったかと言うと、男性向けのファッション誌に香水の広告がありました。引換券を切り取って百貨店に持っていくとサンプルが貰えるというものです。私はその引換券を持って、朝練が終わるとすぐに新宿に行きました。でも、ジャージ姿で行って渡したら店員の態度が凄く悪かった。今考えると当然なのですが、当時の私にはとてもショックで、本当に来なければ良かったと思いました。それを面接で言いました。その態度では客が増えない、伊勢丹はもっとよくできると言いました。そうしたら内定をもらえました。今思えば、率直に言ったのが良かったのでしょうね。


金谷: 今は人材開発本部長ですが、人事本部長のご経験からすると、当時のご自身はどうですか。


曽山: 生意気だと思います(笑)。でも、何も言わないイエスマンよりはいいと思います。




入社1年で伊勢丹を退職。



金谷: でもそうして建てなおすぞと思って入った伊勢丹も、1年で辞めてしまったんですよね?


曽山: 自分の課題に向き合った結果辞めました。最初は仮配属があり、私は新宿本店3Fの婦人セーター・ブラウス売場の中のアンサンブル売場で働きました。どの同期も若いだけでお客様からイケメン扱いされていました(笑)。次は浦和店の服や鞄の売場、その後、希望していた紳士服に配属されました。スーパーメンズという身長が180cm以上かウエストが100cm以上の人向けのコーナーです。DKNYやポールスミスなどハイブランドのXXXL、5Lなどのサイズを扱う売場です。日本では新宿伊勢丹でしか売っていませんので、日本各地からお客様がいらっしゃいます。


金谷: 辞めようと決意したのはいつごろですか。


曽山: 新たな挑戦がしたいと思い、8月頃から転職を考え始めたでしょうか。


金谷: 僕も一社目を3ヶ月で辞めているので、8月ですと2社目で働き始めてますね(笑)。



(一同、笑)





転職、そしてサイバーエージェントへ


金谷: 転職しようと思って、次の会社はどのような基準で考えたのですか。

曽山: 12月くらいに、決意しました。今なら第二新卒という扱いがありますが、僕が転職エージェントに登録してすぐに返ってきたメールは、「社会人1年目のあなたにはご紹介する仕事はありません」という内容でした。受けたいと思ったのはコンサルかベンチャーです。コンサルには社会人一年目の自分にはかっこいいというイメージがあり、ベンチャーでは大きなチャレンジできると思いました。12月に外資系コンサルの筆記試験を受けましたが、問題を開いた瞬間にまるでわからず、やはり落ちました。

まずは今の仕事を辞めて就活をし直そうと思い、12月に上司に辞意を伝えました。「3年間は居ろ」と言われて、かなり引きとめてもらいましたが結局3月31日に辞めました。その時点で転職先は決まっていませんでした。

金谷: 次を見つけてから辞めるというのが一般的だとは思いますが、僕も一度辞めて無職になりました。なかなかセオリー通りには行かないですよね。

曽山: ある転職雑誌にベンチャーセミナーの告知があり、そこにサイバーエージェントと書いてありました。聞いたことのない社名だったので検索しました。すると、HPの真ん中に「採用 第二新卒募集」と書いてあり、これは私のために書いてある!と思って即エントリーをしました。メールを送った数時間後に返事が来て、翌日に面接に行きました。当時は社員数が20名で、女性社員は2名しかいませんでした。

1次面接では現在広報・IRの責任者をしている女性社員と、短髪の藤田(社長)が出てきました。私は新卒で大企業に入りましたので、社長の名刺は初めてもらいました。これが衝撃でした。しかもその社長は自分のわずか1歳上。かっこいいと思いました。面接後、他の社員にも会ってくれと言われて、日を改めて会ったのが今の副社長の日高、創業メンバーです。

内定を出すのでぜひ来て欲しい。いつから来られるか、と聞かれて、挨拶回りをしたいので1週間後を希望しましたところ、後日談ではすぐに入社してくれてありがたかったと笑われました。普通は現職を辞めてからなので2-3ヶ月先ですよね。その希望通り受け入れてもらい、4月16日に入社しました。前職を辞めてから2週間後くらいです。

金谷: 最初は人事ではなかったんですよね。

曽山: 広告営業でした。今でいうアドネットワーク、色々なサイトの広告枠を束ねて売るというもので、企業に電話をして営業にいきました。





元・鬼上司の噂?!


金谷: 僕が掴んだ極秘情報によると、曽山さんはとても朗らかですが、その頃は怖かったとの話があります。詰め方が尋常ではなかったと。どんな感じでしょうか。

曽山: 4月に入社して8月にマネージャーになりました。私の血液型はA型で、診断テストでも完璧主義と出るくらいにとても細かい性格です。自分にもメンバーにも厳しく、多くを要求していたのです。せっかちなので、例えばメンバーにメールを送ろうと送信ボタンを押した瞬間にはその人に「メール見た?」と尋ねているような具合でした。また、成績を上げている自信もあったので、自分のやり方で間違いないんだという態度でした。言うことを聞いてくれるわずかなメンバーは結果を出しますが、大多数はそのやり方が嫌いだったでしょうし、もっと自由にやりたいという思いもあったでしょうから全然結果が出ません。あるとき、そのメンバーが隣のチームに移ると翌月に営業MVPになって、ショックでした。自分のマネジメントスタイルを変えなければいけないと思いました。

金谷: 今思うと、その頃の自分は間違っていたと。

曽山: 大きく間違っていました。全く話を聞かない人でした。戻れと言われれば昔のキャラに戻れますが、嫌です。他人を自分の型に押し込もうとするので互いに疲れてしまいます。

金谷: 今でも必要であれば怒る場面もありますか。

曽山: 直属の部下には今でも厳しいところはあります。そのかわり、成功したときには大きく褒めて喜びを分かち合えるようにしています。


P6183185.JPG


意外とこれが好き!


金谷: これも極秘情報ですが、エニアグラムが大好きだそうですね。社員は全員しているのですか?

曽山: 好きです。今は入社するメンバーでも内定者勉強会などで使ったりしてくれています。エニアグラムとは自己診断ツールの一種で、アメリカではスタンフォードも研究しているそうです。20分ほどの診断に回答すると、完璧主義、論理的、目立ちたがり・・・など1から9のタイプが分かります。これによってお互いの理解が進みますし、自分と違うタイプがいることを認められるとマネジメントの幅も広がります。管理職全員の研修で役員のタイプを紹介したら大盛り上がりしました。

金谷: 理解した上でコミュニケーションすると、やっぱり違いますか。

曽山: 違いますね。例えば論理型というタイプ5は、単純にすごいねと褒めても不信感を抱きます。君のここがすごいとか、この考え方がすごいと具体的に褒めると響く。そのように、褒め方にも適切なバリエーションがあります。大学生でも社会人でも使えます。エニアグラムは外資系企業でも使われているそうです。


人材育成で重要なこと。「決断経験」


上田: 今日は事前に質問をいただいていますので、そちらもご紹介します。まず、曽山さんが人を成長させるにおいてもっとも重要だと思うことは何でしょうか。

曽山: 人材育成で重要なことは決断経験です。自分がキャリアを積むにしても、誰かを育てるにしても、決断経験が重要だと思っています。どれだけ質の高い決断を、どれだけの量経験しているか。これによって市場価値が決まります。スキルとは別の概念です。同じスキルの人が2人いて1人だけ選ぶなら決断経験の価値がある人の方が採用される、というのが私の考えです。

金谷: 面接をされる際に、決断経験をさりげなく聞き出しているのですか。

曽山: どの会社の面接でも今まで一番頑張ったことを聞かれますよね。これが決断経験です。決断という言葉は重く感じますが実は軽いものもあり、、例えば今日ここに来ようと思ったことも決断です。テニスサークルに入ろうかなと思いきやラクロス部に入るのも、アルバイトを始めるのも、先生に留学のことを相談することにするのも、ピアノを習いたいと親に言うのも、どんな小さなこともすべて決断です。

私が就活生におすすめするのは、子供の頃から今までの人生すべての決断を、細かいものも含めて書き出しリストアップすることです。書き出してみると、隣の人とは全く違う指紋のような形で出てきます。これが実は今の自分を作っている。例えばネットゲームを24時間して世界一になったでも良いし、部活でも研究でもいい。社会人も同じです。ずっと受身で仕事をしている人は自分でしたと言えるものがなく、決断経験が少ないです。大企業でも活躍している人やベンチャーでバリバリしている人は、自分でした決断がたくさんある。この量と質を上げることがキャリアでは一番重要だと思って、大事にしています。

金谷: 会場のみなさん、一斉にメモをとっていますね(笑)。

曽山: 人事という職業はヘッドハンターやエグゼクティブサーチの人とも話しますが、彼らにどういう質問をしますか、どういうところを見ますかと聞くと、言葉は違いますが必ず決断経験が出てきます。それが知識や脳を使った経験なのです。失敗していてもいいんです。失敗から学習していればそれもバリューになります。


一番大きな失敗


金谷: 曽山さんも大きな失敗をしてきたという話ですが、その中でも一番大きな失敗はどんな感じですか。

曽山: 一番大きな失敗は、サイバーエージェントに入社6年目で営業部長をしていたときに1億円の損失を出したことです。しかも当時は会社が赤字で苦しかった時期です。こちらが提案した内容でお客様から受注をいただき、実際に広告を実施したところ全く結果が出ませんでした。それで大トラブルになり、結果的には1億円規模の損失となりました。

金谷: サイバーエージェントは、失敗を許容する文化があると聞きますが、その失敗は許容されましたか?

曽山: その失敗は許容してもらえました。サイバーエージェントは失敗を許容する文化ができています。その失敗が悪気がなく会社のためを思ってした決断によるものであれば認めます。逆に、信頼を裏切るような不正は規模が小さくてもダメです。ミスを許容するのは、多少の損失があったとしても、学んで次に活かしてほしいという意図です。実際、私の1億円の損失も取り返せたので。


成果を出す人材の特徴


上田: 成果を出す人材の共通点や特徴は何ですか。

曽山: 10年人事をしてきて多くの人を見ていますが、成果を出す人は陰の努力が違います。裏で努力していない人は上にあがれない、というのは大事なポイントです。見えるところで競争していると思うのは間違いです。その裏でどれだけ努力できているか。それは時間とは限りませんが、すごく努力している人は成果を出しています。

金谷: ウェブ業界は忙しい人が多いと思いますが、その中で裏で努力するための時間を作るのは難しいという声もあります。その辺はどう思いますか?

曽山: ただ忙しいというだけの人は考えている時間をとってないことが多いです。忙しい人の中でも、考える時間をもつ習慣があるかどうかで分かれます。考えることは担当分野の戦略でも、キャリアでも、営業成績をどう達成するかでも何でもいいのですが、まず考える時間をとることが大事です。そうしている人は、例えば週に1回30分だけでも会議室にこもったり、時間をとったりして自分の考えを文字に起こしています。経営人材になる人は考える時間をとっています。


今後ウェブ業界で活躍する人材とは


上田: 今後、ウェブ業界において重宝される人材やスキルはどういったものになりますでしょうか。

曽山: 私たちの会社では、変化を恐れない人、変化を受け入れられる人のほうが圧倒的に活躍します。頑固で自分の意見に拘る人はダメです。自分の考え方が間違いないと思っている人は大体間違えます。変化が激しい業界ですので、昨日考えていたアイディアを絶対に正しいと思っていても、翌日になると間違っていたり、トレンドが変わったりということが起こります。結論的には、変化できる人、習慣で言うと自己否定がどれだけできるかです。良いアイディアだ、売れるはずだと思っても、翌日考え直してこれは売れないわと自己否定できるか、それが大事です。

金谷: 変化に柔軟に対応するって大事ですよね。僕も自己否定はよくします。数時間前のアイディアでさえ、何だこれと思うことがあります。僕は適性があるのかもしれないですね(笑)。


社長に反対意見を言えるのか


上田: オーナー企業はトップダウンという印象がありますが、サイバーエージェントでは社長に対してよい意味で反対意見を言える社員はいるのでしょうか。

曽山: 習慣としてそういう場があります。「あした会議」という年に2回の会議です。社長の藤田が審査員で、役員7名がそれぞれ社員を4-5人とチームを組み、藤田に対してサイバーエージェントの明日に繋がる経営の提案をしています。例えば、新会社を作る、新規事業を作る、新しい人事制度を作る、コストカットするなどです。経営にプラスになることなら何でも提案できます。その提案内容で、1-7位までチーム順位がついてポスターで掲示され、名前がソーシャルメディアにガンガン拡散されます。今のままではここがダメだと提案しなければならないので、あまり言いたくないところもあるわけですが、みんなビリになりたくないので必死に課題探しを頑張ります。人間の心理ですね。結果的にとても良いアイディアが出ます。結果的に7位の人でも当然考えてきています。社長の作ったものに対して良い意味の否定をしないと良い提案になりません。藤田も会社は変化した方がいいと思っているので、聞く耳を持っていて理解があります。むしろ、ぬるい提案では点をつけません。サイバーエージェントではスマートフォンのゲーム事業もしていますが、それもあした会議で提案されたものです。今では年間で600億円くらいの売上になっています。あした会議で生まれた新規事業の営業利益は2006年から今までで約100億円です。

金谷: あした会議で曽山さんが提案したことはどんなことですか。

曽山: 直近では、人材開発本部長を他の優秀な人材に任せて、人材開発本部を専門で作るという提案です。あした会議では役員人事も提案されますので、1回で1-2人の役員の役割が変わります。


CA8とCA18


金谷: ちょっと踏み込んだ質問になりますが、事前情報の中には、曽山さんの最近の人事について降格なのかな?と疑問をもっている方もいるようなんですが、ブログを拝見するとなんだか降格ではない感じですよね。その辺はいかがでしょう?

曽山: CA8は役員の声を踏まえて私が設計をした制度で、2008年に始まりました。2年毎に8人の取締役のうち2人が入れ替わる仕組みです。これまでの4回行っているので、CA8を退任し取締役ではなくなった延べ8人と、新しく若手から入った8人がいます。私は抜けた方の8人の1人です。

ある社員が「もっとチャレンジしたいのに役員が変わらないから上が詰まっている。役員は辞めたいと言わなければやめなくていいので僕らが上にいけない。だから辞めようと思っている」と声を張って言っていました。その声を私も藤田も拾っていて、役員を入れ替える制度ができました。

藤田から、管理職やマネジメントで伸び悩んでいる人がいるので、打開策を求められました。GEやP&Gなどの外資系企業ではたとえば相対評価の下1割を厳しく評価したり、退職につなげていくという制度があると本に書いてありました。切るのはさすがにやりたくないが、下1割を指名して研修などを受けさせるのは良いと思って、役員会へ提案しました。藤田は、良い策になりそうだけれど、指名された該当者がやる気をなくしそうだからダメかな、こういうのは経営陣から姿勢を示した方がいい、と言いました。そうして最終的に役員8名のうち2人ずつ入れ替わることに決まりました。

このとき、役員退任は降格ではないとする、という重要なことを決めました。役員は当社ではキャリアパスの一つでしかなく、入って抜けて、もしくはまた戻って、と、サッカー日本代表で対戦ごとに選抜メンバーが変わるようなイメージに決めました。

金谷: ではCA8から外れたことは降格ではないんですね。

曽山: はい。仕組み上でマイナスなので別の工夫が必要だったのは、役員会に参加できなくなることでした。CA8を退任するときには藤田と全役員が面談するのですが、私は在任6年と長い方でしたので、そろそろだと思っていました。その面談で藤田から言われたのは、役員会に人事の案件を持ってこなくていい、全部曽山くんが決めていいと言われました。プレッシャーもありましたが、裁量権を渡してくれたことを嬉しく思いました。ですので私は今CA18という執行役員で取締役ではありませんが、権限は全く変わっていません。また仮に出戻りCA8になればもちろん経営の一員としても頑張ります。


女性向けの人事制度


金谷: サイバーエージェントは女性が多いですが、女性向けの人事は大変なのではないかと思います。気を使っていること、気をつけていることは何かありますか。

曽山: 女性比率は3割ですが、インターネット企業の中では多い方です。新卒採用では男女半々ですが、中途採用のエンジニア職の男性比率が高いため7:3となっています。自然体で働けるようにするというのは男女関係なく一番のキーワードです。女性だけにバリバリ頑張らせるのは大変ですし、必死に頑張る女性ばかりを増やしたいわけではありません。その人の才能を発揮してほしいので、自然体で働けることが大事というのが根底の考え方です。ただし、男性が70%で役員も全員男性なので、下手をすれば男性判断になってしまうことは目に見えていますから、女性向けの人事制度を作るときは極端です。

例えば、営業の女性がまだ2割しかいなかった頃、彼女たちの苦労をヒヤリングしたところ、営業の仕事は好きだけれど頑張っていると肌が荒れる、それは仕事のモチベーションに関わる問題だと言っていました。私には予想外の回答でした(笑)。

(一同、笑)

曽山: そうした女性社員の要望で、美容ドリンクを1日1本無料で提供し、また、エステ代も月1万円までOKとしました。今でも美容ドリンクとエステ代支援は続けています。当時は営業の女性の退職率の高さが課題だったのですが、こうした会社の姿勢をきっかけに今は女性の営業局長もたくさんいます。

営業以外の女性社員への配慮も必要で、クレームもありましたが、美容ドリンクが飲みたいなら申し訳ないが営業になってくれと返しました。結果としてスタッフの退職もなく、スタッフから営業へ異動した人もいませんでした。自然体が良いけれど、女性向けに環境を作るときには意図的に偏らせます。過保護にしないと辞めてしまうので。でも、これが正しいとは思っていません。美容ドリンクなんかにつられない、という女性もいて然るべきです(笑)。



(Q&A編に続く....)





今回はインタビュー編をお送りいたしました。
次回はQ&A編をお送りいたします。


曽山さんの採用基準や私生活に関して幅広くお答えしていただきました。
特にサイバーエージェントで苦労されたこと、女性向けの珍しい(?)福利厚生制度の裏話は必見です!


次回記事は近日公開予定、乞うご期待!


来る9月13日(日)、上智大学SJハウス・クルトゥルハイム庭園にて、BBQガーデンパーティを開催いたします。通常はなかなか入る事の出来ない、上智大学が誇る素敵なガーデンにて、OB・OG現役世代を問わず参加いただけます。

食材は、お肉は産直、築地より調達してくる新鮮な魚介類、野菜からシェフが厳選!ネオソフィアンが誇る焼肉フリークがせっせと焼きます。

そして今回は上智大学料理サークル「らくっく」とコラボ!グルメ話に花を咲かせます。

焼肉にのめり込むのもよし、ワイワイ楽しむのもよし、これまで数百人の方にご参加いただき、大好評いただいている人気イベントです。お友達誘ってぜひお気軽にご参加ください!



■イベント概要

対象:上智大学OB・OG及び学生

主催:ネオソフィアン 共催:らくっく(上智大学料理サークル)

日程:2015年9月13日(日)13~16時 (集合時間:12:50)

会場:上智大学SJハウス・クルトゥルハイム庭園

人数:先着100名 ※一人参加も大歓迎

会費:下記申込ページにて予約後、現地で現金にてお支払(複数予約申込可)

昭和以前卒のOBOG5,000円、平成以降卒OBOG4,000円、学生2,500円

ご友人(上智関係者に限る)含む複数人でのご予約の場合は、チケットを人数分(最大10名)ご予約いただき、申込フォーム内でお友達の【氏名】・【昭和卒or平成卒or学生】を人数分ご記入ください。


※ご友人の氏名の記入がない場合は複数チケットの予約となりませんので、ご注意ください。

※ご予約後都合が悪くなった場合、もしくは間違って予約した場合、予約内容に変更(キャンセル・追加など)があった場合は、予約サイトのメッセージで主催者にお知らせください。既にお申し込みの方でご友人を追加したい場合は、ご友人の【氏名】・【昭和卒or平成卒or学生】をお知らせください。勿論、ご友人自身から個別にご予約いただいても構いません。



■お申込方法

こちらにてお申し込みをお願いします。

 

<留意事項> 

1.「川手(かわて)」にて庭園を予約しております。

2.集 合:SJハウス入り口前  集合時間 12:50

3.会 費:上記受付場所にてお支払いお願いいたします。

4.食 材:食材、ドリンク、BBQセット機材などは会場にてすべて準備させて頂きます。

(もちろんお好みのお酒やデザート等持参も大歓迎です。)

5.持ち物:アウトドアです。タオル、ティッシュ、日よけ、虫除け等必要なものは各自ご持参下さい

6.小雨程度であれば雨天決行予定です。

(ただし荒天が予想される場合は事前に開催有無をメールにてご連絡させて頂きます) 


代表幹事:寺脇加恵(00法法)、川手康弘(07理電)、岩佐大樹(14済済)


※お申込みいただきましたみなさまに、今後のイベントをご案内させていただきたいと思いますので、ネオソフィアンのメーリングリストにも追加させていただきます。

※上智大学ソフィア会は、ソフィア会会員の個人情報(氏名、住所、メールアドレス、卒業年度、学部学科など、個人を特定できる情報)の適切な保護及び利用が非常に重要であると考えています。送信された個人情報は、ソフィア会会則にのっとった目的の範囲内において利用します。

詳しくはソフィア会の個人情報保護方針をご覧ください。


ウェブページ