「世界の卒業生と繋がろう!キプロスより」①

今回は、オンラインイベントではなくブログ記事として、キプロス在住の岩田さん現在お住まいの国について紹介していただくことになりました。記事は何回かに分けてお送りいたします。

 

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みなさん、こんにちは。ヤーサス!ポルトガル語学科2003年卒の岩田芙美子と申します。このたびは2015年より縁あって暮らしているキプロスという小さな島国について、みなさんにご紹介できればと思います。

「キプロス...世界史で耳にしたことがあるような...。たしかサッカーで日本と対戦してなかったっけ...?」キプロスと聞いてパッと思い浮かぶのは一般的にはこんなところでしょうか。他にも、珍しい分断国家として覚えている方もいるかもしれません。

そうなんです、キプロスは南北に分断されており、島の南側のキプロス共和国と北側の通称北キプロスに分かれています。

キプロス共和国は、EU加盟国かつギリシャ語(実際にはキプロス系ギリシャ語)が公用語であることから、地中海に浮かぶヨーロッパの国として紹介されることが多いのですが、実は北キプロスはトルコの占領地域であり、トルコ語(キプロス系トルコ語と本土のトルコ語)が話されています。また、島自体の地理的な位置も、トルコのほか、レバノン、シリアといった中東地域がもっとも近く、ヨーロッパの雰囲気をもちながらも中東の色合いの濃い独特の場所です。


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歴史を遡ってみても、地中海の最東部に位置することから、交通の要衝や軍事の戦略的な拠点として目をつけられ、さまざまな王朝や国に支配されてきました。キプロス人が自ら、「キプロスは娼婦の申し子だ」と皮肉めいて言うゆえんです。

南北の境界線にはバッファゾーン、あるいはグリーンラインと呼ばれる緩衝地帯があり、国連平和維持軍の管理下にあります。私の居住地は南側のキプロス共和国なのですが、ちょうどこのバッファゾーンの真横に現在の住まいがあり、UNの監視車が時おり行き来するのを見かけます。緩衝地帯にある建物、家屋は打ち捨てられ、廃墟と化していますが、長いこと人が住んでいないことで、バッファゾーンは自然が育まれ、木々の生い茂る、動物の宝庫ともなっています。

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キツネが日中に走り去っていく姿、春の日差しのもとヨーロッパハチクイというカラフルな鳥の群れがみせた乱舞と響かせた独特のさえずり、早朝からライチョウの家族が地べたをタタタタタッと走る漫画のような光景...。在宅ワークでデスクに向かっていたところ、窓越しに見えるベランダの柵に突然チョウゲンボウ(ハヤブサの仲間)が降り立ち、目が合ったことも。首都で暮らしながら、こうしたナショナルジオグラフィックさながらの光景が見られるのも、皮肉なことにバッファゾーンの手つかずの自然ゆえと言えます。

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四季の移り変わりもこの地域独特かもしれません。現在5月下旬ですが、日中はほぼ夏の気候、先日ロックダウンが明けてから、ビーチは日光浴や海水浴をする人でごった返しています。毎年この時期にはシリア砂漠やサハラ砂漠から砂塵が飛んでくることも影響し、砂塵に覆われどんよりした4月のある週はすでに真夏日のような暑さでした。

 

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キプロスの春は、桜を思わせるようなアーモンドやアプリコットの花が山の斜面を覆い、ありとあらゆる黄色の花々がそこらじゅうに咲き乱れる美しい季節なのですが、2か月もすると幕を閉じてしまいます。

そして10月頃まで続く、うだるように暑く長い夏...。夏の間にはほぼいっさい雨が降らないため、グランドキャニオンを思わせるような風景が広がります(むしろ"ミニ・オン"ですが...)。落ち着いてひと息つける秋も瞬く間に終わり、年間でもっとも雨の多い冬がやってきます。風神雷神が唸りを上げ、亜熱帯のような雨の日もあるので、地中海性気候を想像してこられると驚かれるかもしれません。

次回は南北キプロスの住人たち、南北問題、私自身の南北との関わりについてお話してみたいと思います。

文責 岩田芙美子(2003外ポ卒)


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