上智大学法学部卒業生の皆さんの「学生時代の思い出」を不定期に掲載しています。あんな人、こんな人、いろんな人が登場しています。
第10回目は向山肇夫さんです。
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世界平和に向けた日本国憲法第9条の学問的論究を
地方の高校から、私が新設も間もない上智大学法学部へ入学したのは今から60年あまり前のことになる。
人生とは不思議なもので、後に第79代内閣総理大臣になった細川護煕君が同じ組にいたのが判ったのはズッと後のことで、彼が国会議員選挙に出た時だった。
私が、法学部に入学し最初の授業は寺田四郎法学部部長の「法学概論」だった。度の強い丸い眼鏡をかけて授業で繰り返し言われたのはかの有名なソクラテスの言葉「悪法も法なり」だった。
はじめはその意味も判らなかったが、少しずつ判りかけてきたのは3年生の頃だった。今の3年生はもう就職活動の準備にかかるというから学問としての法学を考える余裕がないのではないかと心配になる。
激化する国際紛争や世界的大企業の合併などで多くの法律論争が展開されており、高度の学問的知識が求められていることは論を待たないだろう。
当時私たち3年と4年生で寺田先生指導のもと会報『上智学生法学論集』(上智大学学生法律学会・1961)を創刊した。私もこれに「日本国憲法第9条に関する一考察」寄稿した。
さらにこの論文をもとに国際連合学生ゼミナールでは、「日本国憲法第9条の国際政治社会学における位置」を発表したり、上智大学ソフィア国際関係研究会誌『流動』創刊号に纏めた覚えがある。国際政治社会学とは、その頃第9条を考える上での私の考えた造語で、今となっては懐かしい。
戦後日本が曲りなりにも平和でいられるのは、日本国憲法第9条のお蔭であるといっていい。今後世界平和に向けた第9条の学問的論究を期待したい。
向山肇夫
1963法法卒
日本ペンクラブ会員