このたび上智大学元専任教員(外国語学部ロシア語学科)ガリーナ・イワーノヴナ・パヴレンコ先生が、2024年1月26日に逝去されたとのご連絡がありました。
享年85歳。
ここに謹んで哀悼の意を表します。
2003年卒業(43期)の鈴木佑也さんが、著書『ソヴィエト宮殿――建設計画の誕生から頓挫まで』(水声社,2021年11月)で2023年度日本ロシア文学会賞を受賞しました。

今回受賞された著書と、鈴木さんが翻訳を手掛けた本をご紹介します。

『ソヴィエト宮殿 建設計画の誕生から頓挫まで』
鈴木 佑也 著
水声社 2021年11月

  『サバキスタン』1-3巻
ビタリー・テルレツキー(作) カティア(画)
鈴木 佑也 (翻訳)


徳永晴美著『入門ロシア語の教科書』(語研)が、11月24日に出版されましたのでお知らせいたします。
徳永先生のご遺稿ですので、ぜひ多くの皆様にお手にとっていただければと思います。
 

出版社「語研」

アマゾン
語研『入門ロシア語の教科書』徳永晴美+タチヤーナ・シプコーヴァ ISBN978-4-87615-397-8(ためし読みPDFあり)
ロシア語を学ぶ学習教材『入門ロシア語の教科書』(徳永晴美+タチヤーナ・シプコーヴァ ISBN978-4-87615-397-8)の内容紹介(ためし読みPDFあり)
こんにちは。ロシア語学科同窓会事務局です。11/18(土)16時からの講演会につきましては、想定を上回る参加希望のため、急遽会場を変更することとなりました。講演会・総会は、11号館ではなく、10号館講堂にお越しください。なお、懇親会につきましては、変更なく11号館ラウンジにて開催いたします。<会場変更後>講演会:16:00~17:30 上智大学10号館講堂総会: 17:30~17:45 上智大学10号館講堂懇親会:18:00~20:00 上智大学11号館ラウンジ直前のご案内となり申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願い申し上げます。ご不明な点がございましたら事務局までお問い合わせくださいませ。ロシア語学科同窓会 事務局roshiagogakka@gmail.com
2023年11月18日(土)開催予定の講演会・総会・懇親会に参加される同窓生の皆様へご案内です。

○山手線一部区間終日運休
11月18日は山手線外回り、大崎池袋間が終日運休となるようです。
詳細はJR東日本の案内をご参照ください。

○四ツ谷キャンパスの工事について
四ツ谷キャンパスの北門からメインストリートにかけて、現在工事中です。
北門からの入構も可能ですが、通路が狭くなっているため、ご通行の際にはご注意ください。

○講演会・総会会場について
10号館講堂に変更になりました!
10号館は、キャンパスの奥、総合図書館の向かいにあります。
場所がわからない方は、キャンパスマップをご参照ください。

○懇親会会場について
11号館ラウンジで開催いたします。
講演会、総会にご参加される方は、エレベーターで地下1階までお越しください。
懇親会から参加される方は、11号館地下のラウンジまで直接お越しください。

当日皆様にお会いできるのを楽しみにしております。

ロシア語学科同窓会 会員各位

 

みなさま、こんにちは。

早速ですが、2年ごとに開催しておりますロシア語学科同窓会のご案内です。

同期・先輩・後輩をお誘いのうえ奮ってご参加ください。

お送りしている郵便またはメールをご確認いただき、115日(日)までに出欠のご連絡をお願い申し上げます。

なお、同窓生で郵便もメールも届いていない方は、ロシア語学科同窓会事務局(roshiagogakka@gmail.com)までご連絡ください。

 

【講演会・総会・懇親会】20231118日(土)【1:講演会】日時:20231118日(土)16:0017:30

場所:上智大学11号館311教室(オンライン視聴できます)

講演者:井上幸義氏(16期・1976年卒)本学名誉教授演題:「ロシアの宗教・ことば・歴史  -ロシアのウクライナ侵攻から再考するロシアのアイデンティティー形成-  (ロシア語学科同窓生にとってロシアとは何だったのか?)」【2:総会】日時:20231118日(土)17:3017:45場所:上智大学11号館311教室

議題:

1. 役員改選案(会長及び会計監査の選出)2. 同窓会会則の改正案(事務局長及び会計の定数について)3. 決算案承認【3:懇親会】

日時:20231118日(土)18:0020:00

場所:上智大学11号館ラウンジ

会費: 5000円(維持会費2000円含む)

※家族2名出席の場合、会費8,000円(維持会費含む)

会費お支払い: 1115日(水)までに指定の銀行口座にお振込みお願いします。

『諜報国家ロシア-ソ連KGBからプーチンのFSB体制まで-』
保坂三四郎著
中公新書 定価本体980円+税
2023年6月発行


 昨年のロシアのウクライナ侵攻後すぐに、ふと思い出して2006年に暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤが書いた『ロシアン・ダイアリー』を読み直し、ロシアが2003年から2022年のウクライナ侵攻まで一直線上にあったことがよくわかった。しかしそれでも「なぜ?」という疑問が残っていた。〔巻末に、モスクワ支局長時代にポリトコフスカヤと面識のあった田中和夫氏(11期/故人)が、その無念の思いを書いている。〕
ところが本書を読んで、パズルの最後のピースがはまるようにすべてが腑に落ちた。学科生、若い卒業生には特に読んでいただきたい一冊である。彼らが、ロシア語学習や仕事熱心のあまり、無自覚のうちに「諜報国家」に取り込まれないことを祈るばかりである。
せっかくのよい機会なので、本書に込めた思いをエストニアに住む著者から送ってもらった。

K.A
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私は、諜報機関を専門に研究しているわけではありません。ソ連崩壊から30年以上が経ち、自分が、国家保安委員会(KGB)という「過去の遺物」の研究を行うことになるとは思いもよりませんでした。1998年に上智大学ロシア語学科に入学しました。大学の授業はサボり、1年の半分くらいはインド、パキスタン、イランなどでバックパッカー(死語?)として過ごしました。
当時を振り返って思うのは、ロシアは多くの問題を抱えつつも、民主的な制度や価値観を共有する国になったのだという幻想です。学会や大学もそうで、ソ連時代の党政治から現代ロシアの「議会政治」が関心の中心となり、ソ連やロシアを特徴づける最も特殊且つ重要な制度である情報保安機関の存在は忘れ去られました。モスクワが少しでも情報保安機関に関わるテーマを研究する外国人を嫌ったこと、ソ連・ロシアに滞在したい院生や学者の自己検閲、KGBアーカイブが閉鎖されたこと、などがその背景にあります。
拙著をお読みいただいた方から「ロシアは永遠に変わらないと絶望した」という感想を頂くことがあります。しかし私の狙いは逆です。司馬遼太郎やミアシャイマーのようにロシアは地政的条件から「緩衝地帯」を必要とするとか(これはフィンランドのNATO加盟へのロシアの対応で、我々の思い込みであることが分かったと思います)、歴史的に専制的皇帝を必要としてきたから民主主義は根付かないとか、長期かつマクロな構造から将来のロシアの姿が宿命論的に解釈されることがありますが、私はそうは思いません。どこを変えればロシアが変わりうるのか。拙著では制度的要因に注目してそれを理解する鍵を示したつもりです。そのような意味で、これからロシア研究に果敢に取り組む若い学生に希望を与える一冊になればと願っております。(46期 保坂三四郎)
中央アジア、魅惑の国・キルギス物語―モスクワ、ソウル、キルギス、ウクライナへの道
ツルゲーネフ,ユーリー・ダメノビッチ/富岡 讓二【著】
2023年7月発行



上智大学ロシア語学科同窓会の皆様

この度、「中央アジア、魅惑の国・キルギス物語」、副題、モスクワ、ソウル、キルギス、ウクライナへの道を出版致しました(流通経済大学出版会、390頁 定価2700円+税)。 7年の上智生活は5年間のロシア語科と2年の経済学科、部活は吹奏楽部6年、入学初年度はロシア語の難しい文法に着いて行けずに直ぐの休学。 5年時に1964年の東京五輪では冷戦下の埼玉・戸田ボート場でロシア語通訳、緊張したが貴重な体験となる。 長い学生生活や人の世の幸せは良き人々との出逢い、しかし悲しい別れ、願うのは平和を心底にウクライナ戦争を含み、数年間書き続けました。

書くきっかけはロシアや中央アジア専門の旅行会社より、新しく設立されたキルギスの11年生の日本語学校へ、月100ドルのボランチア教師として行かないかと案内される。 学生時代から未知の地域・中央アジアに密かな興味を抱き、ロシア語を公用語とする同国でロシア語のブラッシュ・アップ。 もう一つの願いは三蔵法師がその昔、この国を通りインドへ向かった事、作家の司馬遼太郎も同国を数度訪れ乍ら、バイカル湖に次ぐ透明度の高い塩湖・イシク・クル湖を見ずして亡くなる事が人生最大の心残り、との逸話を耳にしていました。 近隣の中央アジアも訪れ、この訪問を基に小説を書き残したい等の想いから(冬の寒さから体調不良になり1年弱の帰国になりましたが)。 長い間苦しみ学んだロシア語、優秀な諸先輩と比べロシア語も楽器も3流。 だが若い時代からの、この2つの学びが私のささやかな人生路を支えて呉れました。

ロシア語では中々就職が見つからず長いアカデミック?なキャンパス生活、繊維会社に入社し一度は海外へ行きたいとの夢を抱き航空会社へ転職、間もなくソ連時代のモスクワ支店に転勤。 何事もニィエット(NO)の規制と食料事情も厳しいソ連時代、幼い子供を伴う家族生活に不安が伴いました。 楽しみはモスクワ市内、ウクライナ・ホテル内の小さなカウンター、日本からの旅行者への応対(会話)、そして懐かしい上智の同窓との再会等でした。 長年憧れていたジャズバンド・シャープス&フラッツのリーダー原 信夫さん、国内やロシアでも人気女優の栗原小巻さん、歌手の石井好子さん、ダークダックス、ロイヤル・ナイツ他の音楽関係者、ジャーナリスト、政治やスポーツ関係、国内では簡単にお話も出来ない方々、時には我が家にもお越し頂きました。 上智での才なく苦しんだロシア語や楽器練習、長く続ければ良き出逢いもあるものだ、と独り思い。 9月からアマゾンや楽天を始め他の通販でPRが始まり電子書籍化も。

9月9日には読売新聞(上記)、10月には朝日新聞に広告掲載予定です。

尚、上智大学キャンパス内の紀伊国屋書店で、10月2日より開催されています、「大学出版協会フェアー」でも展示されています。 宜しければこちらも覗いて下さい。

混沌化が進む時が流れますが、平和や安寧の時代が戻ります様にお祈り致します。 皆様、どうぞお元気に良き日々をお送り下さい。 観光、音楽、各種芸術、スポーツ等々の国際交流により、平和と人々に笑顔が蘇る時代を心から祈ります。

2023秋 冨岡譲二 こと 三田 譲 (5期卒)

3月28日(火)、真田堀の桜が散り始める中、2022年度学位授与式が東京国際フォーラムで行われました。ロシア語学科からは50名の学生が卒業を迎えました。外国語学部が対象となった午後の式典では、ロシア語学科を代表して野尾郁美(のお・いくみ)さんが学長から学位記を受け取りました。野尾さんは午前の部では管弦楽部の部員としてホール壇上でオーケストラ演奏に参加しており、大活躍の一日となりました。

2022年度の卒業生はロシア語学科第63期卒業生となります。四ツ谷キャンパスに戻って行われた学科別集会では湯浅剛・学科長をはじめとするロシア語学科の教員から祝辞が送られ、卒業生ひとりひとりに学位記が授与されました。ロシア語学科同窓会の幹事には石井隆也(いしい・たかや)さんが選ばれました。今年の12月に行われるであろう同窓会での再会を誓い、卒業生たちは紀尾井町から巣立っていきました。

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今年は江沢国康先生没後3周年となります。亡くなったのは2020年3月10日(享年84)。江沢先生はロシア語学科中興の祖と言える方です。(後述。)

皆さまご存じのように、ロシア語学科の始まりは1957年に上智大学文学部に外国語学科ロシア語専攻が設立されてからですが、その1年後に外国語学部が設立されロシア語学科となりました。その年(1958年)に男子校だった上智大学が男女共学となったのも記念すべき事でした。江沢先生(以降、江沢さんとします。)は1958年入学ですので、ロシア語学科2期生となります。私は翌年入学の1年後輩となるのですが、事情があって1年次後期を欠席したので、1年生を2年やりましたから、4期生です。江沢さんは1936年6月15日生まれ、小中高は学習院で、若いころ胸を病まれていた事もあり、学年が遅れました。私より4歳年上です。

江沢さんは在学中より学科中にその名を知られ、衆目の一致するところ染谷先生の1番弟子です。卒業後は東京外国語大学の1年制の専攻科に2年在籍されたあと(当時、東京外国語大学には大学院はありませんでした。)、上智大学の助手となられました。染谷先生をはじめ初代ロシア語学科学科長ピオヴェザーナ神父の評価も高かったのだと思います。助手として在職中の1960年代中頃以降、全国で吹き荒れた学園紛争の渦中に上智大学も巻き込まれ、授業も満足に行われないような状況(大学のロックアウト等もありました。)で、先生方も嫌気がさして授業をやる気を失う中(学内にはロシア語学科廃止論も出ていたそうです)、江沢さんは学科の事務を一手に引き受け、先生方を励まし何とか学科存続へと導いていかれました。ポツターヴィナ先生が胃癌で倒れられた事も大きかったと思いますが、江沢さんは自らの人脈の中から何人もの非常勤講師を招かれ非常事態に当たりました。江沢さんのご努力のお陰でロシア語学科は存続できたのだと思います。当時早稲田大学大学院博士課程に在籍中の私も1969年6月から非常勤講師となり、翌1970年には外務省ロシア大使館勤務の宇多氏(4期生)と共に専任講師となりました。以降の事は皆さま良くご存じの事と思いますし、また私は1990年に他大学に転職しましたのでそれ以降の学科の事は良く分かりませんので、この辺で筆を置きたいと思います。個人的には、私はいろいろと江沢さんの後を追ってきたように思いますし、生涯を通してお世話になりましたが、これらは思い出話となってしまいますので、これで失礼します。 

2023年3月16日      中村泰朗
『夕空の鶴~ニキータ山下・オーラルヒストリー~』
水谷尚子・ニキータ山下著 成文社刊
A5判上製 本文304頁 カラー口絵4頁 音楽CD付き 税込定価4400円
 
 昭和の時代、「ダークダックス」、「ボニージャックス」、「デュークエイセス」など3~4人編成の男声合唱グループが活躍していました。その中でひと味違う存在を示していたのが「ロイヤルナイツ」です。そのひと味とはロシアの味付け。味の素のような存在が「ロイヤルナイツ」でバリトンを担当したニキータ山下さんでした。ニキータさんはロシアの血が入った、本人に言わせると「まじり」です。
 著者の水谷尚子さん(*)は、ロシアレストラン「チャイカ」で時々歌っていたニキータさんの歌を聴いて非常に興味を抱き、彼を取材して本にまとめました。
 彼の生い立ちから始まり、波乱万丈といっても言い過ぎでない人生を紡いでいます。
 昭和の時代を生きたロシア語同窓生には、当時の出来事が甦ってくるでしょう。ニキータさんを知らない世代は、ソ連時代にそんなことがあったのかと驚くでしょう。
 ロシア・ソ連の歌を愛してやまないニキータさん。ロシア語つながりのみなさんにぜひ読んでもらいたい一冊です。ニキータさんがピアノ伴奏で歌っている15曲(**)、ソ連でのコンサート実況録音3曲が収められたCD付きです。 (16期 蜂谷 南)
 
*著者の水谷尚子さんは中国現代史が専門の明治大学准教授。日本のロシア語同時通訳草分けの一人でもあるニキータ山下さんは、5期の山下万里子さん(東海大学名誉教授)の令兄にあたります。
**わざわざこの本のために新たにスタジオ録音
徳永先生の思い出 

私が先生の教えを受けたのは、先生が通訳者として第一線で活躍される傍ら、非常勤講師として時間を割いて上智まで『ロシア語通訳論』の講義に来て下さっていた時だった。その授業は、三年生か四年生の時に希望者だけが選択する週一コマで、1年間だけのお付き合いだった。だからずっと後に、先生が教授になられて、学科で基礎のロシア語からみっちり教えることになったと聞き、後輩達を羨ましく思ったものである。それくらい、先生の講義は常に明晰、ユーモア(駄洒落?)にも溢れ、楽しく、これからロシア語を勉強しようという後輩たちに対する愛に溢れたものだった。

しかし、当時の授業のシラバスには、やる気の無い者お断り的な、結構厳しいことが書かれていたように記憶している。決して出来の良くなかった私は一瞬怯んだが、ロシア語を志したときから、自分の専門の音楽分野を始めとしたロシアの芸術家、文化人の通訳が出来るようになりたい!と思っていたので、とにかく一流の通訳である先生の教えを請いたいと思い、講義に登録した。

実際に講義が始まると、ピシッとダブルのスーツできめて講義にいらっしゃる先生はプロフェッショナリズムの塊りで、そこがまだ甘ちゃんの学生から見ると恐れ多いようでもあり、しかし通訳の仕事に対する先生の真摯な姿勢こそが、学ぶべきことであった。また熱意のある生徒にはとても温かく、親身になって応えてくれる熱血教師だった。

ある時、私は念願叶って、ロシアはクリンのチャイコフスキーの家博物館が日本でチャイコフスキー関連の展覧会をする、というイベントのアルバイト通訳に行けることになり、緊張しつつも嬉しくて小躍りした。しかし、その通訳のアルバイトに行くと、昼間の先生の授業をサボらなくてはならない。迷った私は素直に先生に、そのような予定で講義を一回休むと報告した。すると先生は怒るどころか反対に「授業でやった理論を実践できる良い経験だから行って来い!」と、快く送り出して下さったのである。そればかりでなく、いくつかのアドヴァイスもいただいたような気がする。そして、現場に行って実際どうだったか、結果を報告せい!ということだった。

また、先生が米原万里さん達と設立されたロシア語通訳協会のイベントの情報なども下さり、まだまだひよっこ通訳の私だったが、先生に励まされて、協会の学習会などにも通うようになった。そこでは、他にも第一線で活躍される通訳の方達が沢山いらしたが、私が徳永先生の上智での生徒だと分かると、皆さんとても優しく接してくれ、まさに先生の威を借りて(?)、そうした素晴らしい先輩通訳の方々と交流することも出来、そのおかげで今の自分があると思っている。本当に、先生には計り知れない恩義があるのだ。

徳永先生に大学で教えていただいたのはたった一年だったが、思えばそれ以前にも、ロシア語を志した高校生の時に見た、NHKのTVロシア語講座の中でも教わっていた。そして、当時はちょうどペレストロイカの真っただ中で、ゴルバチョフの重要な演説や、日々入ってくるソ連・ロシア関係の重要なニュースはみんな先生の同通で聞いた。そんな先生のロシア語通訳術のエッセンスが詰まったご著書は、社会人になってからもお守りのように傍に置き、目の前の仕事で必要になる箇所を読み返していた。

近年闘病されていたことも知らなかった私にとって、先生はいつもエネルギーに溢れ、ロシア人も舌を巻くほどのロシア語を話され、豪快に飲んでは通訳・ジャーナリスト仲間たちと語らい、美声で楽しそうにカラオケを歌う...そんなお姿のままだ。心からご冥福をお祈りいたします。
「緑、記者になれ!」

徳永先生の言葉を信じて、今日まで12年間、記者をやってきました。

就職活動で悩んでいたとき、先生のこの一言に背中を押され、私は報道記者になりました。

どうして先生が私に「記者になれ」と言ってくれたのか、今でもわかりません。「私は記者に向いていない」と思ったことは、これまでに数え切れないほどあります。

それでも、今日までこの仕事を続けてこられたのは、先生の言葉がいつも心の中にあったからです。

先生から直接聞いた話や、著書で読んだエピソードから知った、モスクワで取材に駆け回っていた頃の徳永晴美記者。今でも私の憧れの記者です。

「給料は奨学金だと思え」。

日々の事件や事故の取材に疲れて、記者をやめたいと思ったとき。

大きな取材テーマを前に、なかなか自分の能力を発揮できず、自信をなくしたとき。

「緑、学びながらお金がもらえるなんて、最高のことじゃないか」。

先生は常にそう励ましてくれました。

記者の取材は、多岐にわたります。大学でロシア語しか学んでこなかった私が、サンマ漁船の上でカメラを回し、オリンピックの金メダリストにインタビューし、宇宙から地球に帰還した探査機の原稿を書く。その都度、新しい知識を頭に詰め込んで、ニュースとして世の中に発信しなければなりません。

だからこそ、毎日、新たな「学び」があります。

学ぶことが仕事になる。記者って、なんて素敵な仕事なんだ。

先生は、新聞記者時代の経験をいつも懐かしそうに話し、記者の仕事の面白さを教えてくれました。

そんな先生から、「禁句」だと教えられた言葉があります。

「頑張る」という言葉です。

くじけそうになって先生に相談し、元気づけられた私は、いつも「先生、ありがとうございます。これからも頑張ります」とメールを返しました。

そのたびに、先生に怒られました。

「『頑張る』は、禁句だ。頑張るんじゃない。エンジョイするんだ」と。

先生に報告できていなかったことがあります。去年、ロシアによる軍事侵攻が始まったあとのウクライナに、取材に入ることができました。

ロシアによって家を破壊され、家族や友人を奪われ、故郷を追われた、たくさんのウクライナの人たちの悲しみや怒りの声を、ロシア語で取材しました。

つらい取材がたくさんありました。

学生時代にあんなに大好きで、一生懸命勉強したロシア語を、先生方が一生懸命、教えてくださったロシア語を、私は嫌いになってしまいそうでした。

あのとき、もし先生に連絡していれば、きっと、いつもの言葉が返ってきたと思います。

「緑、エンジョイするんだ」と。

不謹慎かもしれませんが、ソビエト連邦が崩壊したときも、病気と闘っていたときも、誰の目から見ても「頑張っている」ように見えた徳永先生は、誰よりも「エンジョイ」していたのだと、私は思います。

今日も大切な取材が待っています。どんな取材でも、いつも不安です。

でも、なるべく「頑張らなきゃ」と思わないようにしています。

私も少しは徳永晴美記者に近づけたでしょうか。そう信じて、今日もエンジョイします。

徳永先生、大切な教えをありがとうございました。いただいた言葉は、すべて私の宝物です。

卒業生有志から2022年に逝去された徳永晴美先生への追悼文をお寄せいただきました。
同窓会ブログでご紹介していきます。
追悼文は、カテゴリ「訃報・追悼」からご覧ください。
また、追悼文をお寄せいただける方は、同窓会メールアドレスまでご連絡ください。
roshiagogakka@gmail.com
上智大学元専任教員(外国語学部ロシア語学科)徳永晴美先生が、2022年8月1日に逝去されました。
享年75歳。ここに謹んで哀悼の意を表します。
『歌(アヤゴ)の島・宮古のネフスキー -- 新資料で辿るロシア人学者の宮古研究の道程』
田中 水絵 著
2022年10月発行

著者は、学科11期の田中(池田)みづえさん。
100年前、ロシアからひとりの民族・言語学者が宮古諸島を3度訪れた。彼の名前はニコライ・ネフスキー。自在に宮古の言葉を操り、島民たちから古来より伝わる言葉、歌、風習を聞き集めた。綾なる古語で紡がれたアヤゴ(歌)に魅了されたネフスキーだが、大粛清の時代のソ連で悲劇的な死をとげた。しかし彼が残した資料は宮古研究の光源として、いまも宮古の島々を照らし出している。
いま蘇る宮古研究の先駆者ネフスキーの旅。日露の新資料が明かす「何故、宮古なのか?」。
付録として、ネフスキーの『宮古方言ノート』を駆使し訳した2論文収録(田中水絵訳)「(宮古の)病気治療」「神酒」。


【著書より一言】
11期(71年卒)田中(池田)みづえ と申します。
本年10月、田中水絵 『歌(アヤゴ)の島・宮古のネフスキー -- 新資料で辿るロシア人学者の宮古研究の道程』をボーダーインク(沖縄)から出版いたしました。

ロシアの言語・民族学者ニコライ・ネフスキー(1892~1937年)は1915年に来日し、
14年間の日本滞在中に東北のオシラ神・アイヌ語・宮古諸島研究で功績を残しました。
しかし、帰国後、スターリンの粛清で銃殺されました。
ネフスキーの生涯については上智大学の大先輩・加藤九祚先生が1976年『天の蛇』(大佛次郎賞受賞)を著されました。
同書で加藤先生は「何故、宮古なのか」という疑問を発しています。

拙著は『天の蛇』以降に世に出た資料、また加藤先生と共に参加した2012年のサンクトペテルブルグにおけるネフスキー国際シンポジウムの折に入手した未発表の資料などを基に、この疑問に対する答えの一つを提示するものです。

今年はネフスキーの初の宮古来島から100年目に当たります。
ロシア語学科同窓会の皆様に御紹介頂ければ幸いです。
よろしくお願いします。

2022年度日本ロシア文学会大賞を、上智大学名誉教授であり第16期卒業生の井上幸義氏が受賞しました。

この受賞を記念して、日本ロシア文学会全国大会にて記念講演が開催されました。

 

2022年度 72回全国大会 大賞受賞記念講演

井上幸義(上智大学名誉教授)「ゴーゴリの鏡の世界」

 

記念講演の様子はYoutubeで公開されていますので、みなさま是非ご覧ください。

 

 

また、「受賞のことば」が学会ホームページに掲載されています。

こちらも是非ご一読ください。

『微笑みは永遠に−日本とロシアを愛したニコライ・ドミートリエフ神父』

ДА ПРЕБУДЕТ ВО ВЕКИ УЛЫБКА ТВОЯ!  Отец Николай Дмитриев, влюбленный в Японию и Россию

2022720日発行 教文館 定価本体1,500円+税)

https://shop-kyobunkwan.com/476429995x.html


 著者は、学科23期の山崎ひとみさん。本書は著者が、夫・ニコライ神父との思い出をつづったエッセイ集です。著者が1985年に留学したレニングラード神学アカデミーでの二人の出会いから、日本に移住したニコライ神父が、2019年に函館市郊外の上磯ハリストス正教会で祈祷中に59歳で永眠し埋葬されるまでの出来事が、様々なエピソードやコメントを挟んで描かれています。

ロシア語はロシアの文化・歴史と不可分です。したがって、ロシアの国柄を知るにはどうしてもロシア正教についての理解が必要なのですが、案外このことは見落とされています。卒業生はもちろんですが、学科の学生のみなさんに特に本書をお勧めするのは、本書がロシア正教への優れた入門書となっているからです。

著者は、あとがきをこう締め括っています。


今年の2月24日(ロシアによるウクライナ侵攻)以降、ロシアを巡る世界情勢は大きく変わった。

「人が戦うことを赦されるのは、ただ一つの場合だけ----自分の心の中の悪魔との戦いだ」とよく言っていたニコライのことだから、今、彼がいたら、さぞ嘆き悲しんだことであろう。

争いのない和やかな日々が一刻も早く来ることを切に願う。



ぜひご一読を。

 

【著者よりの一言】

 この度、同窓会の皆様により温かいお力添えを頂き、拙書のご案内を頂けることとなりました。心より感謝申し上げます。

 夫の永眠に際し、人間の命の尊さとはかなさを思うと同時に、彼がこの世に生きていた痕跡を少しでもとどめたいと、追悼のエッセイを書かずにはいられませんでした。教文館さんから上梓することができましたので、彼が生きたロシア正教というキリスト教世界について踏み込んだ描写をすることができましたのは、さいわいでした。

 一人でも多くの方にニコライの人生に触れて頂ければ幸甚に存じます。

 心痛むことの多い社会情勢ですが、この場をおかりして、同窓生の皆様のご平安、ご健勝を心よりお祈り申し上げます。

外国語学部ロシア語学科共催の哈爾濱学院顕彰基金講演会「日ソ国交回復交渉研究の現在」のご案内です。

● 日時   2021年12月17日(金)17:30~19:00
● 講師   岡田 美保 氏(防衛大学校)
● テーマ  日ソ国交回復交渉研究の現在
● 形式   Zoomミーティングによる開催

参加希望の方は、事前にお申込みが必要です。
詳細は下記のURLをご確認ください。

拝啓 秋冷の候、同窓生各位におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

前回同窓会が開かれたのは2019年12月でした。それから数ヶ月もたたないうちにコロナ・ウィルスにより世界が一変しました。その状況が今も続くなかですが、ロシア語学科同窓会2021のご案内を送らせていただきます。
同窓会は2年ごとに開催され、同窓生による講演会と総会(4年に一回)、それに引き続いての懇親会が恒例となってきましたが、長引くコロナ状況のなかで、中止にせざるをえないと考えておりました。
ところが、思いがけず役員会で「オンラインでの講演会ならできるのでは」という声があがり、これを幹事会(各期幹事の集まり)に諮ったところ、こういう時期だからこそやりましょう、との意見が多数を占めました。今回はその総意にしたがい、みなさまを「初めてのオンライン講演会」にお誘いする次第です。

【ご案内とご報告】
■オンライン講演会
2021年12月4日(土) 16:00 ~17:30 (Zoom利用)
*講演者 武隈喜一氏(20期)
*演題   「アメリカはロシアの裏返し」
ロシアのエリツィン時代とアメリカのトランプ時代。講演者は、二つの超大国の「混乱と分断」を全期間にわたり現地で立ち会うという稀有の経験をお持ちです。ご本人の希望により、聞き役、進行役を交えての「鼎談的講演会」を予定しています。さて、どのような展開となるか乞うご期待。

*講演者略歴
1980年上智大学外国語学部ロシア語学科卒業、1982年東京大学文学部露文科卒業。出版社、通信社などを経て1992年テレビ朝日入社。1994〜99年、テレビ朝日モスクワ支局長。2012〜13年、北海道大学スラブ研究センター客員教授。2016年7月からテレビ朝日アメリカ社長としてニューヨークに駐在し、今年8月に日本に帰任。著書に、『黒いロシア、白いロシア----アヴァンギャルドの記憶』(2015)、『マンハッタン極私的案内』(2019)、『絶望大国アメリカ----コロナ、トランプ、メディア戦争』(2021、三冊とも水声社)、編訳書に、『ロシア・アヴァンギャルドⅡ 演劇の十月』(1988)、『ロシア・アヴァンギャルドⅠ 未来派の実験』(1989、ともに共編、国書刊行会)などがある。 

■オンライン講演会への参加方法
下記リンク、または、ハガキがお手元に届いている場合は、ハガキ記載のQRコードを読み取り、講演会出欠フォームに必要事項をご入力ください。締め切りは11月30日(火)です。
講演会前日に、ご連絡いただいたメールアドレスへ参加リンクをご案内申し上げます。
https://forms.gle/jCh456gZneZxgkjB8
 

以上につき、ご不明な点・ご意見などございましたら、ロシア語学科同窓会(roshiagogakka@gmail.com)までご連絡いただければ幸いです。