連続講演会 全4回シリーズ


「ダイバーシティこそが日本経済を活性化させる」 
-第2回 発達障がいの方たちが働きやすい職場は、誰もが働きやすい-

前回、5月25日に開催された連続講演会の第2回が11月25日(火)17:30から上智大学
四谷キャンパス2号館17階国際会議場で開催された。今回も上智大学、上智大学ソフィ
ア会、ソフィア経済人倶楽部の共催で開催された。当日は現役学生含め80名を超える
参加者を得た。

講演会の開催に先立って、上智大学学術交流担当副学長の杉村美紀様から
ご挨拶いただいた。
「上智大学をダイバーシティ、多様性の交差するキャンパスにしたいということでこれ
からの100年を作っていきたい。上智ではダイバーシティについては言語とか宗教とい
う観点で話されることが多いが、今日のテーマである発達障がいの方々はマイノリティ
ーではあるが社会を作り上げていく仲間としてとらえ議論していくことは上智としても
考えていかなければならない大きな課題。そうした課題を提供頂いたと思う。
~中略~こうした講演会がこの後も続けて学びの輪を広げられるよう、大学もそのお手
伝いをさせていただければと考えている。」


杉村美紀上智大学学術交流担当副学長様

続いて、ソフィア会とソフィア経済人倶楽部を代表してソフィア会副会長、ソフィア
経済人倶楽部会長の濱口敏行様には「2009年からグローバリゼーション・ローカリゼ
ーションの諸問題について勉強してきた。この2年はダイバーシティについて勉強す
ることにした。ご参加の方にはぜひ、パネルディスカッションに参加いただいていた
だければと思う。」と挨拶があった。

基調講演
今回の講演会は初めに数多くの企業へ障がい者雇用に関するコンサルティング、障がい
者、難病を持つ方々の就労支援、発達障がい者の就労に関する講演会を展開されている
テスコ・プレミアム・サーチ㈱代表取締役の石井京子様(外国語学部英語学科卒)によ
る基調講演でスタートした。(プロフィール詳細は最後に掲載)


石井京子様

石井様の基調講演の内容は以下の通り。
様々な障がい者の就労支援に携わって12年になる。発達障がいの方のとの関わ
りはリーマンショック後の2008年秋以降、相談にみえる方が増えた。大企業に就職
された方ばかりで働き始めてみたら人間関係などに行き詰まり、比較的短期に離職され
た方が多かった。最初の会社を退職後、派遣スタッフとして働いていた人が多い、派遣
スタッフは決まった仕事をこなせばよく、職場の人間関係も深い人間関係を必要としな
いことから比較的続けやすかったのではないかと思う。

発達障がいの方が働きやすい職場は誰もが働きやすい職場だと思っているので、今日は
発達障がいの方を例に話を進めていく。障がいのある方で求職活動をしようとしている
方、障がい者雇用を考える企業との両方に対応している。発達障がいの人へのサポート
では履歴書の作成、面接の受け方など丁寧に時間をかけて説明する必要がある。一方、
障がい者雇用を始めたいという企業からはどんな仕事を用意すればいいのか、どのよう
に接すればいいのかなどの問い合わせをもらっている。

□障がい者雇用の現状
日本では「障がい者の雇用促進等に関する法律」で一般企業は従業員数の2.0%の障が
い者雇用が定められている。昨年、1.8%から引き上げられた。昨年の数字では全国で
1.76%であるが東京では1.72%と全国平均より低い。現在、従業員数1,000名以上の
大企業では殆ど、2.0%を達成しているが、従業員数が300人未満の企業では全国平均
より低い状況になっている。達成企業は半分以下、一人も雇用していない企業も多い。
達成できていないとハローワークから雇用の指導がある。障がい者雇用の雇用が達成さ
れない場合は従業員300名以上会社では不足1名につき月5万、年60万円を納付するこ
とが企業に義務付けられている。201名以上だと軽減措置があるが来年、納付金制度が
従業員101名以上の会社に拡大されることになっている。指導にもかかわらず達成でき
ていないと未達成企業として社名が厚生労働省のHPに公表され、企業イメージが損な
われることになる。
障がいには身体障がい、知的障がい、精神障がいと3種類あり、手帳の種類が異なる。
障がいのある方の数は身体障がいの方は全国で366万人、この中で5名以上の企業で
34.6万人が常用雇用されているが65歳以上が60%と高齢者に偏っている。知的障がい
の方は54.7万人いるが18歳未満が多い。18-65歳迄の労働人口では27万人いる。精神
障がいの方は320万いるが就労は2.9万人で大変少ないのが現状。こうした障がいのあ
る方の中で作業所、福祉就労として働いている方もいるが賃金は自立できるには程遠い
賃金で働いている。
 身体障がいでは見てわかる障がい、肢体不自由以外に腎臓・心臓等の内部障がい、
言語、聴覚、視覚障がいの方がいる。
知的障がいはIQ知能指数で判定するが、先天性の方や自閉症の場合もある。
精神障がいは様々な疾患による。発達障がいは特化した手帳がないので知能検査に応じ
て、療育手帳か精神障がい者手帳に分かれる。どちらかの手帳を持つと障がい者雇用枠
での就労の対象になる。
民間企業における障がい者雇用は毎年、過去最高の雇用率で伸びている。さらに平成
30年には法定雇用の算定基礎に身体障がい、知的障害以外に精神障がいも対象になり、
企業が積極的に取り組み雇用率が上がると考えている。障がいによって雇用に偏りがあ
るのが現実で、身体障がいの方の雇用は多いのに精神障がいの方の雇用は少ない。最近
、発達障がいのある方の雇用が増えてきている。

□発達障がいへの理解
発達障がいについては教育や福祉の現場ではよく知られるようになってきたが、
一般社会では十分に知られていない。企業の人事担当者の前で講演することも
しばしばあるがよく知られていないという現状である。(石井さんが会場に発達障がい
について知っている人の挙手を求めたところ)ふつうは一割以下であるのに今日の
参加の方はご存知の方が比較的多い。
発達障がいは様々なタイプがあり、ADHD(注意欠如多動性障害)、学習障がい、
自閉症やアスペルガー症候群の総称である。それぞれタイプが異なり一人一人の
状況も異なるし、複数の特性を持つ人もいる。
発達障がいを詳しく見ると、学習障がいは知的な遅れはないが、聞く、話す、計算が
苦手で学習面でアンバランスである。ADHDは一番目立ちやすい、じっとしていられ
ない、忘れ物・ミスが多い等が特徴で義務教育の小中学校では特別な支援が必要で、
全体の6.5%いるといわれている。かなり高い割合だと思う。
私のところに来られる相談は9割がアスペルガー症候群である。特徴としては
コミュニケーションの障がい、対人関係の障がいといわれている。かといってコミュ
ニケーション自体が苦手というより自分のことはよく話す、語彙も豊富、でもうまく
かみ合わないといったこところがある。働き始めてから気づく人が多く、感覚過敏の
特性を持っているかたもいる。
発達障がいの特徴で、これは学術的な分類ではないが特徴をわかりやすく説明
する。ADHDはうっかりミス、遠慮ない物言い、アスペルガー症候群は自分の関心
あるところにこだわる、冗談が通じない、周りの空気がなぜ変わったのかがわから
ない。学習障がいの場合は知的能力に遅れはないのに繰り上がりの計算ができない
人がいる。自閉症は言葉が少ないのでわかりやすいと思う。
アスペルガーはタイプがあって、積極的型、受動型(人に頼まれたら断れない)、
孤立型もある。こうした苦手さとは別に強みになる点は、自分の好きなことへの
集中力、興味を持ては難関な資格の獲得、優れた記憶力で専門職に就く人もおり、
適性の合う仕事に就くことが大事になる。また、普通の人だったら嫌になってしまう
様な単純な反復作業も苦にならない人もいる。独特な美術センスを持った方もおり、
建築家のガウディも発達障がいだったのではないかといわれている。
*ADHD(注意欠如多動性障害:Attention deficit Hyperactivity disorder)、

□キャンパスと発達障がい
キャンパス内で思いがけないことで困っている発達障がいの大学生もよく知られる
ようになった。こうした発達障がいの学生の支援もされてきている。中・高校では
自分のクラスや席が決まっていたしホームルームで学校の情報が自動的に入って
きた。大学では自ら情報にアクセスしなければならない。授業の選択や教室の移動、
提出期限、グループワークなどで支障が出て卒業するのが精いっぱいという学生が
いる。まして就職活動でどう準備するのか、また、自己理解という課題も出てくる。

・就労準備では例えば履歴書をとっても、これがうまく書けない人がいる。
 折りたたんだ履歴書のサイズがばらばら、紙の角をそろえられない、拡げて読む
 ことを想像できず、開けられないような位置にホチキスをする。
 こういう苦手さを持つ人も支援を受けながら活動している。
・このほか、一般的な相談例としては自己PRができない方が多い。部活もアルバイト
 もしておらず自分をアピールできないと悩む、普通の大学生なら多少の誇張も交え
 てアピールできるが正直で自分が納得していないとPRもかけない、この事例では
 ボランティアのイベントに誘ってPRポイントを作り就職ができた。
・就職活動の課題では自分が興味のあることになると長々と説明してしまう。

□就労後、職場での課題
働き始めてからは具体的な指示がないと動けない、二つ以上の指示があると混乱
してしまい優先順位が付けられないなどの課題がある。これに対してはマネジメント
側に明確で具体的指示がいるという知識が必要になる。また、視覚、聴覚の過敏も
課題で視覚では色のついたメガネなどのツールでの対応がいる。こうした環境調整も
マネジメントとしては重要だと思う。
是非、理解してもらいたいことは、仕事の指示や注意では叱責するときも怒鳴る等は
逆効果ということ。小学生に廊下は「走ってはいけない」ではなく、「歩きます」と
いうように何をすべきかをストレートに伝えること、ミスをしたときは怒らず、諭す
ように何で失敗したのかを一緒に考えるよう淡々と接することが求められる。
また、「これ」「あれ」「それ」といった指示代名詞も避けるべき。
職場ではどう対処すればいいのかという課題では仕事の作業マニュアルやスケ
ジュール表を作る、仕事の量と質の確保、目標設定、複雑な作業は工程を細分化する、
コミュニケーションは曖昧な表現は避け具体的にいう、マナーや慣習はわかりやすく
示す、指導や注意は穏やかにといった対応をしてほしい。

こうした点は外国人社員にとっても同じで日本の阿吽の呼吸は通じない、自然に覚え
るだろうというのは文化が違うため通用しない。発達障がいの方が働きやすい職場は
誰もが働きやすいといえると思う。

雇用のマネジメントで大事なことは周囲の理解であり職場で現れる行動と特性を理解し
、それを踏まえた対応すると発達障がいの方がもっと活躍できるようになる。
外資系会社で発達障がいの方の採用が活発化している。多様性の受け入れという点で
一歩進んでいると思う。誰にも働きやすい職場は企業の成長、社会の成長につながる
と考える。


村上 由美さんのお話
石井さんに続いてもう一人のパネリスト、文学部心理学科卒、国立身体障害者リハ
ビリテーションセンター学院聴能言語専門職員養成課程卒、言語聴覚士、Voice
Message代表の村上由美さんからお話しいただいた。
(プロフィール詳細は最後に掲載)


村上由美様

私自身が当事者(4歳まで音声言語を話さず、専門家や母親の療育をうけたて育っ
た)であり支援者として働いてきた。また夫も発達障がい者という3つの立場で歩ん
でいる。今日は発達障がいは働く以前に生活上、困難なことがあることを話したい。
ライフステージによって生活の困難さは変わってくる。子供のころは感覚過敏があり
身辺自立に課題があり、就学後も人間関係とかスケジュール管理などで苦労した。
思春期、青年期では就労に向けた準備で躓きやすい。成人期では会社での人間関係や
業務を進めていく上で基本となることが身に付きづらい。就労支援の研究者によると
仕事が続かない理由として仕事に必要なスキル(ハードスキル)よりも仕事のために
必要な土台(ソフトスキル)がうまくいかないというケースが多いという。この点が
注目されている。 

なんでそういう困難さが出てしまうかというと、感覚過敏やこだわりの強さで受け
入れられる幅が狭い、とか何が苦手なのかが分からない状況がある。あと、見通し
が立てにくいための行動の組み立ての困難さとか、手が不器用でメモがうまく取れ
ないとかいう点がある。
働いていく上では何がわからないかがわからないところで軋轢が出てくる。あとは
ペースの食い違いをどう調整していくかが問題となる。当人だけ頑張って解決しろと
言われても無理がある。企業も家族も支援していくことが重要だと思う。

なぜ、支援の仕事をしているか、言語聴覚士としての仕事の観点からお話しする。
言語聴覚士をご存知の方は?上智には言語聴覚士の養成コースがあるから知って
いる人も多いと思う。言語には色々な側面がある。言語理解とコミュニケーション
を主に指導しているが、これ以外には発声発語とか耳の聞こえ方、嚥下障がいなど
の指導をするのも言語聴覚士の仕事である。
文化とかどこか働くには文脈の理解、抽象的な内容の理解、談話の理解が難しい。
自分の経験とも重なるが抽象的な言語と行動をつなぐのが難しく就労で失敗するケー
スが多い。漠然とした指示が通じない、言語的な理解と重ねながら分析して言葉の
指導をしていくのが言語聴覚士の仕事の一つである。

自分の生活をさぐっていくと時間と物とお金の管理がうまくいかない。我が家では
二人とも家で働いているので、まずはスケジュールを決めた。あまり細かくすると
うまくいかないのでスケジュールの大枠を決める、それをできるだけ守ろうとした。
そうすることで大体の生活が回っていくようになる。
障がい者就労には合理的配慮が求められてくるが、合理的配慮はいかに互いが
共有して「見える化」するかが重要。これを重ねていくことで互いのやり取りがし
やすくなった。家事では家事をしやすいように動線を工夫したり注意書きをラベルで
張り付けたりして、見てわかるようにする。整理整頓も一目でわかるようにする事が
必要。どこに何があるのかがわからないので本棚にラベルを貼ったり、かごに写真の
シールを貼って同じ物を入れるというように見てわかるようにしている。工場等でも
やっている所があると思う。誰が見てもわかるという意味で合理的配慮はこうした
積み重ねだと思う。
夫とのコミュニケーションでは夫の場合、忘れっぽいので音声だけではだめで携帯に
メールを送り「見える化」している、また、コミュニケーションでトラブルを起こし
た時はノートに書いて何が悪かったのか分析して考えてみることなどをやってもらっ
ている。

皆さんの失敗例を聞くと、もの凄く目標を高く設定しているのではと思う。行動の
どこまでだったらいいかをはっきりしてほしい。人事の方にとっては間を埋めるのに
手間がかかる、人を頼めばいいのにといわないでほしい。周りの人の応援、バック
アップしてほしい。コミュニケーションの取り方の手法がいろいろある。具体的行動
のとり方を作っていくが定期的な勉強も必要でと思う。



村上さんの講演資料より

パネルディスカッション&質疑応答
続いて、ファシリテーターの馬越先生と石井さん村上さん、お三方での座談会と
質疑応答が行われた。
冒頭、馬越先生からは「前回はダイバーシティについて女性というテーマでおこ
なった。今回は障がいを持った方もダイバーシティに入れなくてはいけないという
義務感に似たスタンスで臨んだ。ところが、石井さんと村上さんと事前の打合わせを
したところ、話が弾んですごく面白かった。いかに自分がこういう世界を知らないで
いたことを思い知った。
村上さんの著書「アスペルガーの館」という本には実に感動した。素敵なロマンスも
書かれているから、映画化してはどうかと思う。
発達障がいというと遠いことのように思えるかもしれないがそこから学べるものは
数多くある。外国人社員の雇用や国際結婚なども「見える化」することでスムーズな
コミュニケーションができるようになるし異文化コミュニケーションの真髄ではない
かと思う。だから、当然、ダイバーシティの中に含まれると思う。」


馬越恵美子様

馬越先生からお二人への質問が投げられた。
村上さんには「お友達として一緒に旅行に行きたいが、その場合に何か気を付ける
ことは?」

お答えは「私の場合は疲れやすいとか時差が苦手。行く場所による。スケジュールは
ゆとりをもって計画してほしい。イライラしていると見えるときは聞いてもらえると
助かる」

石井さんには「友人の職場に、ものすごく頭のいい人だけど嫌われている人がいる。
なぜか電話応対の声が大きく、感情がうまくコントロールできない。こうした人は
アスペルガーなのか、そのつもりで対応したほうがいいのか?」

石井さん「そうした傾向の方はある程度いらっしゃる。そういう可能性があるとする
と問題を穏やかな声でストレートにはなすとか、スケジュール変更などはできるだけ
早く伝えるようにすることなどの対応をすることでうまくいくのではないか」との
アドバイスがあった。


パネルディスカッションの模様

参加者からの質問
Q1「発達障がいというと成長段階において障がいが分かるものというイメージだっ
たが就労後というケースもあり、どういったきっかけで判明するのか?」
石井さん
「大人になってから気づくという人も多いが、気づかずにいる方もいる。障がいと
個性の線引きはできない。その人が自分で困っていなければ障がいではないと思う。
発達障がいの傾向はあっても環境に恵まれていて問題なく活躍する人もいる。」
村上さん
 「私は三歳になってもしゃべらなかったが夫は30過ぎまで自覚はなかった。大人
 になってからわかったという人は大半は子供のころから努力してもうまくいかない
と思っていた人が多い。きっかけは人間関係でパニックや鬱という他の障がいで
受診して発達障がいと判明することがある。」

Q2「今の子供は私たちの育ったころより、みんなが同じようにしていなければいけ
ないという雰囲気の中で学校生活を送っている。いじめにはどのように対応
されたのか?」
村上さん
 「義務教育の中ではいじめはあったが、そのころは不登校という言葉はなく、学校
へは行くものだと思っていた。私は気が強かったので学校に行くのは私の権利であり、
私が学校に行かないことでいじめっ子が喜ぶのは不条理だと思った。
発想の転換をしてこの人たちに負けないようにするには学校に行くしかないと思って
いた。子供たちは高いレベルを求められているのではないか。個別授業が進むと
楽になるように思える。」
石井さん
 「相談に来られるケースは学校に行けなくなって公立の学校から転校した方が多い。
いまはいろいろな教育機関ができている。単位制の学校、サポート校と呼ばれる
学校を卒業して一般入試で大学に入る方法もある。」
馬越さん
 「かつて履修登録ができず、結果、やめてしまった学生がいた。その当時は知識が
なかったために対応ができなかったが大学でこうしたことへの対応があることが
望ましい。」

Q3「ビル・ゲイツ、S・ジョブス、M・ザッカ―バーグ等はアスペルガーだという話
があるが、幼児期にいろいろ困難さがあったとしてターニングポイントになる
きっかけはあるのか?」
 石井さん
 「アスペルガーの方は能力を持つ人が多いが、経験がなによりも必要である。
ビル・ゲイツの場合は母親がパートタイムジョブをさせたりして体験を積ませた
という話がある。
村上さん
「夫はコンピューター関係の仕事をしているがこの業界は同じ傾向の人が多いので
コミュニケーションに困らないようである。自己肯定感が強いが自信がマイナスに
なると自己中心的にもなる。周りで声を聴ける人がバックアップしてくれるとうまく
いくのではないか」

Q4「発達障がいに関して今後、国等公的機関の取り組みはどうなっていくのか?」
石井さん
 「発達障がいに特化した障がい者手帳はないが法律改正で発達障がいが明記
され、今後周知がさらに進むと思う。手帳の取得によって福祉制度の活用が
できるし、社会的資源の活用がなされると思う。発達障がいに特化した就労移行
支援事業所が出現し、雇用実績が高い事務所も多くなっており、そうしたところで
経験を積み社会に出ていってほしい。」

Q5「企業の障がい者雇用を2%に引き上げられたということだったが世界に比べる
とどうなのか?」
石井さん
 「欧米は進んでおり2%よりはるかに高いと思う。働き方としてソーシャルファーム
などの活用がある。日本では大企業で就労が進んでいるのと雇用率があがって
いくにしたがって海外に追いついていくのではないかと考えている。」

Q6「村上さんの資料を拝見してご主人との工夫したやりとりがあるが折り合いが
つかないときはどうされているか?」
村上さん
 「私が怒っているとき、夫は私が何に怒っているのかが分かっていない時がある。
最近事前にそろそろ怒りそうだと伝える、怒るときは3点セットをやってもらう。
まずは謝ってもらうこと、何がいけなくて今後はどうするのかを書いてもらう。
そして罰金箱に罰金を払うということで解決している。本人はこの3つのほうが
わかりやすいといっている。」


Q7「高校時代、日本の教育についていけずアメリカに留学した。自分自身、ADHD
の気があるかなと思っている。大学在学中に起業しイグジットした後、現在は放課後
デイサービスを展開している。発達障がいの当事者を社員にしているが当事者で
あり、支援者であることはプラスなのかと思う。なぜならその子供たちの気持ちが
わかると思っているが、逆に当事者であることは相手のことがわかりにくいという
部分も持っている。当事者と支援者が兼ねる関係をどうとらえればよいか?」
村上さん
 「自分に似たタイプの人は良く分かるが違うタイプはわからない面があると思う。
よく見ることでこの人は何について考えているのか分析すること、同時に自分の
ことを客観視する練習、学習が人一倍いると思われる。」


最後に馬越先生が以下のように纏められ、次回3回目の開催に向けたアピールで
講演会を終了した。
「発達障がいの方との接し方には異文化コミュニケ―ションのポイントが沢山、含ま
れていると思う。障害のある方が楽しく働ける職場はみんなが輝ける職場、会社に
なっていけるのではないか。
ダイバーシティに関する本日の講演会はこれで終了するが3回、4回と続くので是非、
次回も積極的にご参加をお願いする。」


登壇いただいた石井さんのご著書


村上さんのご著書


懇親会
講演会終了後、会場を移して懇親パーティーが開催された。
冒頭、高祖理事長よりご挨拶いただいた。
「今回の企画を推進していただいた方々に御礼申し上げる。講演を聞きながら
2,3、思ったことがある。ダイバーシティについての企業の集まりなど、経済界で
話をしているが、女性、外国人というところまではいくが、今日のような障がい者の
話にならない。そういう会議で「健康な人を前提にした会社作りの話になっているが、
病気になった人も包み込むようにしないといけない」と発言してもレポートからは
おちていく。これからダイバーシティというなら病気になる人を組み込んでの社会の
作り方が必要になってくると思う。
今日の話は親が子に接するのと似ている。モンテッソリーの話をすると自分が一人で
できるように手伝ってねと言っているメッセージを発しているといっていい。子供が
その時何を考えているかをこちらが見えるようにしていくことが必要と思う。アプロ
ーチの仕方を相手に求めるのではなく、自分が変わってコミュニケーションをとる
ことが必要だ。
三つめは経済人倶楽部というと会社経営をうまくやるという話が多い。2020年は
オリンピックとパラリンピックが行われるが、2020年に向けて日本の社会の
在り方を変えていく方向にある。今日のようなテーマは社会を変えていくことに
つながるヒントを感じた企画であった。これからどういう方向でやっていくか相談
していきたい。」



クレジット 懇談会風景 

ソフィア会副会長石川様の閉めのスピーチ

 「本日は、素晴らしい講演会で、私の経験では大学、ソフィア会、経済人倶楽部が
共催するこのような企画は、初めてだと思う。これも大学とソフィア会の100周年の
連携、同窓生の募金活動の努力の成果によって 深まり、実は大学とソフィア会との
連携が非常に深く協力しあいながら、ソフィアンまたはソフィア会のネットワークを
広めていこうという努力の成果だと思っている。
現在ソフィア会には281の登録団体がある。学部・学科ソフィア会、国内海外地域
ソフィア会、OB会、職業別ソフィア会、各種ソフィア会等すべてあわせると281の
団体13万人の卒業生いる。ただ、今申したソフィア会にはそれぞれくくりがあり、
同じ学部学科の同窓生、同じ地域・職業・学部・OB会に属している。これをとっぱ
らって、横の関係ですべてのソフィアンを結び付けようという運動が今ソフィア会で
NEXT100プロジェクトという運動が佐藤委員長の元に始まっている。枠を取り
払い、すべてのソフィアンがさまざまな関心のあるいろいろなテーマ、悩みを含め
世界中のネットワークで、学部、学年、学科、地域、組織も関係なく、卒業生を結び
つける運動を進めている。本日の講演会をテーマに皆様いろいろとアイディアが
でてきたと思う。NEXT100プロジェクトと補強しながら、絆を深めるために
ご協力をお願いしたい。」

最後に高祖理事長へのお礼と100周年記念事業の成果として、大学、ソフィア会、
経済人倶楽部の絆が深まったこと。そして、枠にとらわれないソフィアNEXT100
プロジェクトの紹介や、今後の活動への協力呼びかけも行われた。

次回の連続講演会開催は2015年春の予定となっている。是非、次回もより多くの
参加者を得て連続講演会を開催したい。


講演会・パネルディスカッション 登壇者プロフィール
コーディネーター・ファシリテーター 馬越 恵美子 様
上智大学外国語学部フランス語学科卒
経済学修士(慶應義塾大学)。博士(学術)(東亜大学)
同時通訳、東京純心女子大学教授、NHKラジオ講師
東京都労働委員会公益委員を経て、現在、
桜美林大学経済経営学系教授・(株)日立物流取締役・異文化経営学会会長
二男を育てながら仕事を継続。現在は孫も3人いる。
著書: 「ダイバーシティ・マネジメントと異文化経営」(新評論)
「異文化経営論の展開」(学文社)
「NHKビジネス英会話・土曜サロン・ベストセレクション・プレミアム」(DHC)

基調講演・パネリスト
石井 京子 様
上智大学外国語学部英語学科卒
人材サービス会社を経て2008年テスコ・プレミアムサーチ㈱設立、代表取締役
多くの企業へ障がい者雇用に関するコンサルティング、障がい者や難病を持つ方々の
就労支援、発達障がい者の就労に関する執筆講演等で活躍されている。著書:「発達
障害の人の就活ノート」「発達障害の人の面接・採用マニュアル」(弘文堂)等多数

パネリスト 村上 由美 様
上智大学文学部心理学科卒
卒業後2年間非常勤で様々な施設で勤務後、常勤で重症心身障がい児施設の外来
部門で発達障がい児及び肢体不自由児の言語聴覚療法や発達相談業務に従事。
2005年よりフリーで活動を開始。発達障がい関係の掲示板管理、原稿執筆、自治
体の発育・発達相談業務、テレビ出演、セミナーや講演を行う。
著書:「声と話し方のトレーニング」(平凡社新書)、「アスペルガーの館」(講談社)等
 

カテゴリ

  • 講演会・懇親会

ウェブページ