2015年ワインツアー

2015年 ワインツアー  山梨に

    山梨に「ルミエール」を訪ねる
                               報告:黒水(広報)

2015年9月12日、SEC2015年度のワインツアー開催の日、早朝の5:49、
関東地方で震度5弱の地震発生!震源地は調布。地震に飛び起きた人も多かったので
は 関東が広範囲に揺れ、土曜日でしたが首都圏の鉄道は徐行等で足が乱れました。

 天気よし!8時に上智北門、集合。ラグジュアリーバスに乗り込む。お一人だけ、
地震のよる電車の遅延で間に合わず、笹塚駅近くでピックアップすることができ、
総勢23名に。その後は順調に山梨を目指しました。

今回も上原隆一さん(上智大学経鷲会会長、SEC理事兼事業企画委員長、日本ソム
リ エ協会認定シニアワインアドバイザー)に企画を立てていただきました。
往路は自己紹介の後、上原さんからバスの中でツアーのポイントの事前レクチャー。
まず、ブドウの樹がどう育成されているか。ブドウ樹の仕立て方、棚をつかうもの、
垣根を使うものなどいろいろな育て方がある。訪問するルミエールは歴史ある由緒
あるワイナリーで肥料も除草剤も使わない有機農法でブドウ樹を育てているとの事。
次に醸造所の見るポイントはこのルミエールでしか見ることができない有形文化財
指定の石の発酵槽。栽培されている品種も甲州はもちろん、スペインのテンプラニ
ーリョなど他ではない取り組みもあるという解説を聞いてテイスティングへの期待
は 大きく膨む~。


写真01 ルミエール看板

ワイナリー到着!ルミエールは創業1885年(明治18年)と歴史あるワイナリー。
代表取締役社長の木田茂樹さんが出迎えてくださり、まずはワイナリーと隣接する
圃場(ブドウ畑)でどのようにブドウがなっているかを説明していただきました。

□日本独自のワイン造りを目指す
ルミエールは標高400Mに位置しているとのこと。甲府は盆地で標高300M以上~
最近は温暖化もあり高いところでの栽培を行い、標高6~700Mまで植えている。
ここでは甲州ブドウ以外にイタリアのタナ、スペインのテンプラニーリョ等温暖な気候
でも育てられる品種も植えている。

甲府盆地は扇状地で砂混じりの地層で水はけがいい土地。もともとブドウは中近東の砂
漠地域の果物、ブドウ栽培は多くの水分を必要としない。乾燥した地域にいいブドウが
育つ。雨が多いとワイン用ブドウは味が薄くなるし、糖度も上がらない。
日本は湿気が高いので糖度が30を超えるブドウ、パワフルな赤とか香りの高い白はな
かなかできない。その中で日本らしいワインを追求している。

栽培上の大きな特徴は「叢生栽培」をしていること。下草を刈らない、除草剤も一切
使わない。ビオディナミという作り方と日本の自然農法を組み合わせて栽培している。
肥料も一切与えない。虫とか菌のコントロールは硫黄とボルドー液だけで行う。
雑草を生やすことで土地の水分を吸わせ、雑草の根がブドウ樹の根をいじめて
ブドウ樹に水分ストレスを与えることでブドウ樹の根は深く伸びていく。雑草が
生えることで草の根が土を耕すことと同じ働きをして、土に空気を含ませる効果もある。

大まかに言って棚と垣根を利用した二つの育て方がある。棚のブドウにはひと房ひと房
、紙がかけられ雨から守っている。甲州種などはこの方法。垣根は枝を横にはやしてい
くギュイヨー方式。垣根は地表から低い位置にビニールシートが地面と平行してブドウ
の房をカバーしている。これで紙をかけていると同じように雨と上から来る菌からも守
ることができる。ビニールシート下にブドウの房がつくのでビニールシートをかけるだ
けで紙を一つ一つかけるのと同じ効果が得られる。鳥からも守っている。

写真  02 棚のブドウ   03 垣根の佇まい   04 垣根になったひと房

甲州種は食用で醸造用には適さないと考えられていたが今から10数年前に甲州種の遺
伝子を調べたところ欧州系のブドウであることが判明。欧州からシルクロードを通って
中国から日本に持ち込まれたと思われる。そこからワインの醸造用に使われるようにな
った。甲州の80社のワイナリーがいいブドウのつくり方等を研究して香りの高いワイ
ンを作れるようになってきた。世界に打って出よう。
KOJ(KOSHU OF JAPAN*)いうチームを立ち上げ、ロンドンで売り込んでいる。
和食 ブームもあり、 和食の繊細な味と合うワインとして認められてきている。世界の
ワイン を目指すのでは なく日本のワインとはどういうものなのかを追求していこうと思
ってい る。味の濃さで はなくバランス日本の食事とあうワイン作りの追求だ。 
*KOSHU OF JAPANのサイト: http://www.koshuofjapan.com/ja/index.html

□ワインを作る!醸造所へ
続いての見学は醸造所に進む。摘まれたブドウは除梗破砕機を使って皮ごとつぶされ
「発酵」の過程へ。「梗」(こう:房の中でブドウの実をつけている枝の部分)は除く
場合と除かない場合があるが基本的には取り除く。機械の中で風船を膨らましてブドウ
を絞るブドウのジュースが下から出てくる。白ワインはこのブドウジュースから、赤ワ
インは皮ごと一緒に発酵させて色を出す。(皮に赤い色素が含まれる)発酵は醸造タン
クで行われる。醸造タンクは冷却装置が付いている。発酵で熱が生じるので温度をコン
トロールする必要がある。発酵温度をコントロールしてねらった香りを出せるようにな
っている。小ぶりのタンクでいろいろな品種で作る。古いタンクはタンクの上から井戸
水をかけて冷やしていたとか。
ブドウひと房からどれくらいのワインが作れるのだろうか?との質問に木田社長は
1キロのブドウから一本分のワインが作れるとご教授いただいた。カベルネだと樹に
7房くらいついて1キロなので樹一本でワインひと瓶の計算になるという。


写真05 タンク

さて、このルミエールならではの見どころの石蔵発酵槽へ移動する。創業130年、
樹の桶でワインの醸造を行っていたが二代目が会社形態にした時点で樽だと大量に
仕込めない、この辺りは石が多いので石をブロックにして組んで地下にタンクを作
ったのが石蔵発酵槽。1901年に作られた発酵槽、このタンクでブドウ10トンが
いっぺんに入ってワインにすると1万本が作れる。10個のタンクがつながっていた
ので100トン分の醸造ができたという大きな装置。こうした地下に石で作るという
のは他では見られない。国の登録有形文化財に指定されているが重要文化財ではない
ので使用することが可能。作り方を伝承する必要もあり、毎年一回このタンクを使っ
て仕込んでいる。今準備を進めていて9月下旬にマスカットベーリーAを収穫して一
般の人も参加して仕込む。この醸造では梗も一緒に仕込む。上から「すの子」を引き、
天井との間につっかえ棒をして発酵させることでブドウの皮が常に醪(もろみ発酵
中の液)ブドウの液に使っている状態を作る。ピジャージュという足で皮が浮いてこ
ないよう沈めるような作業をしないで濃い赤ワインが作れるので効率的だという。た
だ、できあがったワインは発酵槽下部の取り出し口から抜き出せるが皮などは石蔵の
中に入ってバケツリレーで出す必要がある。石蔵での醸造はステンレスと違って蔵つ
き酵母もあるし、梗(枝部分)もつかい複雑味がでてくるようになるという。


写真 06 プレート   07 石蔵(ルミエールの案内パンフレットから)


石蔵の次は地下に案内される。地下にはワイン樽が並ぶ。樽発酵のワインは樽の
香りが付いて味わいがマイルドになるとか。500Lの樽を使って仕込む。
樽は木の産地、樽内側の焦がし具合によってワインも変わってくる。試しなが ら
どんなワインになるか、樽によって違うワインになる。貯蔵用樽を使うと月に
1L 近く蒸発する。サーバータンクにとっておいてワインを継ぎ足していくとい
う。

ここで一口メモ:ワインのコルクについて
悪いコルクかどうかは外観からは判断できない。悪いコルクは厳密には12個に
1個あると言われていて、悪いコルクだと空気が入ったり、虫食いなどでワイン
にダメージを与え、一般にブショネ(コルク栓を仏語でブションという)と言わ
れる状態になる。 スクリューキャップは虫食いがなく、ワインが空気に触れる
危険性もない。このため特に繊細な白ワインなどではスクリューキャップの方が
信頼できるのでスクリューキャップに置き換わりつつある。特に甲州ワインはコ
ルクのにおいがつきやすいのでスクリューにしている。スクリューの方が圧が安
定している。スクリューだと安ものと思われがちだが、ヨーロッパからの注文は
全部スクリューにしてほしいと言ってくるとの事。


□待ちに待ったティスティング・タイム
見学も一巡、いよいよテイスティング!木田社長は5種のワインを用意して下さ
っ た。これだけで結構楽しめる(酔う)。

写真 08 説明をしてくださった木田社長 09 テイスティングの会場 

5種のワインは次の通り。
① ルミエール ペティヤン
 甲州のスパークリングワイン。シャンパン同様、ドサージュしている。一年
 以上発酵。ペティアンはスパークリングワインの中では弱発泡ワインに属す
 るもので木田社長いわく、発売当初は破裂などの危険を避けるためガス圧を
 低く(2気圧程度)、設定していたのでペティアンと名付けたが、今は3.
 5気圧のクレマンを凌駕し、シャンパンと同様の5気圧程度の立派なスパー
 クリングワインになっているとの事。 
② 甲州シュールリー ステンレスタンクで発酵
③ 光 甲州 
樽発酵
④ 石蔵和飲 マスカットベイリーA
⑤ プレステージクラス テンプラニーリョ
  スパークリングの質の高さにびっくり。値段を聞いて、皆さんも「えー」と
 いう歓声  が上がったほど。石蔵は力強い、これって、これまでの日本の赤
 ワインとイメージが  違う。テンプラニーリョもスペインワインとはまた違
 う趣。

 写真 10 ルミエール ペティアン(スパークリング)  11 石蔵和飲

テイスティングが終了し、売店で先ほどテイスティングしたワインを買い込んで
ルミエールを後にすることに。木田社長様、ありがとうござました。大変、勉強に
なりました。

この後、ルミエールを離れ、近くの小高い丘にあるレストランへ。甲府盆地が見渡
せる「ぶどうの丘」でバーベキューに舌鼓。いい風が吹いてくる。ティスティング
で 弾みがついているので早くワインが飲みた~い。この後は四谷につくまで皆さん、
飲みっぱなし?!
甲州ワインの素晴らしさとあえた今年のワインツアー。参加しないと素晴らしさは
分かりません!今年参加ができなかったあなた、来年は是非!お待ちしています。

写真 12 ぶどうの丘でランチタイム

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