2014ASFレポート
2014ASFレポート
特別講演会「藤崎一郎大使に聞こう!話そう世界情勢の裏を読め」
ソフィア経済人倶楽部は、2014年5月25日(日)ASFで開催された特別
講
演会、前駐
米大使、藤崎一郎先生の「藤崎一郎大使に聞こう!話そう!
世界情勢の裏を読め」に
共催しました。((於:12号館203教室)

藤崎先生は、1969年に外務省へ入省。以来、大蔵省、在インドネシア大使
館
、OECD日本
政府代表部、在英国大使館に勤務しました。1999年に北米
局長、2002年外務審
議官、2005年に在ジュネーブ国際機関日本政府代表
部特命全権大使と、要職を歴任
した後、2008年、
アメリカ合衆国駐箚特
命全権大使に
就任しました。大使を4年勤め、2012年11月にご退官、201
3年1月に上智大学へ着任し上智大学のさらなるグローバ
ル化の顔として、
国際戦
略顧問、特別招聘教授に就任されました。
会場は、15分以上前から満席となり、椅子を増やしましたが申し訳ないこ
と
に座りき
れず
立ち見になってしまったり、中に入れずお帰り頂いた方も
いら
っしゃるほどの盛
況ぶりでした。200人以上の方々が最後まで熱心に
メモを
取りながら聞き入っていま
した。

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<国際情勢の読み方は「心理」「時間」「言葉にだまされない」の3本軸>
国際情勢をどう読むかというと、理論よりも歴史よりも、私の40年間の経
験
から言うと
「心
理」「時間」「言葉にだまされない」ということに関係
して
いる。
まず「心理」ということだが、たとえば北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)
を「わけの
わか
らない国だ」と専門家や評論家は口をそろえて言うが、
本当
にそうだろうか。
経済政策をどうするかと考えると、開放政策にするか、あるいは国民に少
し
与えようと
いう
サンタクロース作戦をとるか、それともこのままいく
のか。
もし自分がその国の
リーダーだ
ったらどうするかを考えてみる。
同じように安全保障でも、戦争路線をとるのか、ミサイルも核も廃棄し平
和
路線でいく
のか、
それともこのままいくか。今の体制を何とか永らえ、
リー
ダーは自分が生きのび
るためにどうするか。
「心理」というのは、リーダーやリーダーの周りの既得権益者、一般大衆
の
心理を考え
ると、
だいたいわかるような気がする。
<たくさん「時間」があるほうが、勝ち>
国際情勢には事件やクーデターもあるが、交渉事が大きなウエイトを占め
て
いる。この
大きなエレメントは「時間」だ。相手がどう出てきても自分
に時
間があって急いでなけ
れば、本
当に自分にとって良い形になるまで突
っ返せ
ばよい。
たとえば、中東和平問題。常に交渉しているように見えるのは、動かして
い
ないとアラ
ブ側
の一般大衆から不満が出てくるからだ。テロリストや過
激派
が一般大衆をたきつけ
ないよ
うに常に「交渉は進めている」と言って
いる。
では、なぜ進まないか。この50、60年の間にイスラエルがどんどん強くな
っ
てアラブが
分
裂してきている今、強くなったほうが急いで交渉をまとめ
なく
てはならない理由がな
い。
「時間」を見ると、どう動いていくのかわ
かる。
<大事なのは「言葉にだまされない」こと>
オバマ大統領が就任した2009年「核のない世界を目指す」「中東和平に傾
注する」と言
っ
て盛り上がったが、率直に言って何も起こらないだろうと
思っていた。
オバマ大統領は核のない世界を本当に追求しているのかというと、核兵器
をイランが作り、
北朝鮮が作り、中国が増やしている現状で、アメリカが
ゼロにするはずもないし、誰もゼ
ロ
にしてほしいとも思っていない。確か
に戦略核は減らしたけれど、それは維持費がかか
るか
らいらなかったので
減らしただけだ。
中東和平問題にしても同様、本当に動く時というのはトップが動いたとき
だ。オバマ大統
領
は動いていないし、これからも動かないだろう。しか
も
あと2、3年の任期の大統領に
イス
ラエルが何かを譲るとは思われない。
だけど、常に動くポーズはとるだろう。
また中国の軍事力について、「透明性の向上が必要だ」と議論するが、果
たしてそうか。
問
題は規模だ。「規模だ」と言うと外交的ではないので「透明性」という
言葉を使うの
だが、
「透明性」と言い始めると言った本人は自分でそれ
を
信じ始めてしまう。
本当に何なのかということを考えないと、誰かの演説や言葉で動くと間違
えるので気を
つ
けなくてはいけないと思っている。
<振り子のような米中関係>
最後に米中関係だが、これは振り子みたいなものではないか。
アメリカから見た場合、マイナス点は中国の軍事力の増強、台湾の問題、
知的所有権、
海洋
法などの国際社会のルール無視ないし軽視、人権問題
などがある。
プラスは経済の
チャンス
があること、国連での協力、北朝鮮をコントロ
ールしてもらうこと、そして
大国外交。
中国の軍事力は20年で20倍になっていて、毎年10%増加している。
その問題点は、
世界
第2位の規模になっているのに何のために増やすの
か
ということだ。それは自分を
守るた
めではなく、政治的に影響を及ぼ
すた
めではないか。
中国の経済の発展=軍事=政治的影響力となっている。
「中国の経済発展が望ましい」という美辞麗句のあと「責任あるパートナ
ー
になってほ
しい」
というがこれは一種の暗号で、経済発展が軍事につ
ながっ
ていて、それが政治の
影響力につ
ながっているということを断ち
切れなけれ
ば歓迎すべきことではない。それ
を断ち切れる
かどうかがポ
イントだが、彼
ら自身の体制が変わらなければ断ち切っては
くれないの
でそこが問題だ。
国連はピラミッド構造で、米ロ中英仏のトップ集団の承認で制裁を発動す
る
わけで、そ
こに
いる拒否権を持っている人の意見が中心だ。国連で中国
に協
力してもらわなければ
いけな
いので、アメリカがどちらかに振りきれ
ること
はない。
こうした国際情勢を見るとき、構造の問題としていくつか軸を持ってみると
、
だいたい
のこ
と、大きな姿が見えてくるんじゃないかと思っている。
・・・・・・・・・・・・
このあと、質疑応答の時間になりましたが、ひきもきらず質問が出て、時
間
が足りなく
なってしまいました。

先生からは、総理官邸から日本を広報するための団長に任命されていて、
そ
の時用につくっ
た資料も見せていただけることになっていました。これ
は、
駐米大使の時に使用されていた
ものをアップデートしたもので、これ
をどん
なふうに使って日本を広報しているかをご紹
介いただける予定でし
たが、こ
ちらもあいにく時間の関係で拝見できませんでした。
たくさんいらしてくださったお客様、お手伝いいただいた皆様、そして藤
崎
先生、ありがとうございました。
