ソフィア経済人倶楽部連続講演会2014年度第一回開催レポート

ソフィア経済人倶楽部連続講演会2014年度第一回開催レポート テ


テーマ: - ダイバーシティと日本社会の活性化 -
「女性が社会で活躍するということ」


ソフィア経済人倶楽部では2014年度からダイバーシティをテーマに4回の講演会を計画しています。その第一回が2014年4月25日(金)、-ダイバーシティと日本社会の活性化-「女性が社会で活躍するということ」というテーマで開催されました。
(於:L号館911会議室)
 



当日の参加者はソフィアンOBOG、現役学生を含め、総勢80名を超え、ご来賓としてソフィア会高祖理事長、早下学長(懇親会からご参加)はじめ上智大学、ソフィア会の重鎮の皆様のご出席もいただきました。

冒頭、主催者を代表してソフィア経済人倶楽部の濱口会長が「これまで5年にわたりグローバリゼーションとローカリゼーションの諸問題というテーマで勉強してきた。今年からダイバーシティ、多様性と社会のあり方というテーマでシリーズを組むことになった」と挨拶されました。
また、今シリーズの企画を担当している加藤理事から講演会について「今回第1回は女性、第2回は10月に障がい者、第3回目は来年春に高齢者をテーマに設定し最終的に来年の秋に全体の総括を行いたい。多様性の問題では労働市場の中で最適な人材配置と個々人の能力の最大化で社会に貢献できることが求められている。」と趣旨説明をいただきました。

講演会要旨

講演会の講師・ファシリテーターとして本学出身(1976年外国語学部フランス語学科卒)で桜美林大学教授の馬越恵美子先生をお招きしました。
講演会ははじめに馬越先生の基調講演からスタートしました。基調講演に続き、実際に子育てをしながらの会社勤務の経験を持つ卒業生、お二人、武内志穂さん、新田佳世さんを加えてのパネルディスカッションの2部構成で行われました。(各位のプロフィールは最終部に掲載)

  
★馬越先生


1部:基調講演の要旨

基調講演は「ダイバーシティと異文化」の経営というテーマで多様性を競争優位に結びつけるための長期的な組織変革のプロセスである「ダイバーシティ・マネジメント」を軸に馬越さんのこれまでの研究成果を交えて語られた。
ダイバーシティは広義では人種、性別、宗教、国籍、年齢、障がいの有無、性的嗜好、価値観や個性までも含めたものと定義される。馬越さんが長年にわたり研究されてきた多様性を活かしながらその異質性に配慮しつつ、チャンスの平等を確保する「マインドウェア」が「異能」を活かす上で重要と強調された。

 
★馬越先生 ダイバーシティ・マネジメント(プロジェクター映像) 

21世紀はダイバーシティ・異文化が当たり前の世界になってきている。組織人より、個人としてどう勝負するかが課題と指摘。また、多国籍企業が増える中で、心を開き、思いやりをもつこと、異文化への好奇心、敬意、そして共に仕事をしようとする意思をグローバル・マインドとして紹介され、どういうパーソナリティーが必要かが紹介された。また、国籍を問わない人材活用の好例としてスイスの「ネスレ」を取り上げられた。

この他、日本の画一的な終身雇用、正社員・男性中心の就労モデルに限界が来ていると指摘された。特に企業での意思決定層における女性の登用は世界平均でも下位に属している現実を指摘。2020年までに意思決定層の30%を女性にすることを目指す政府の考えに賛意をしめした。また、女性が活躍する企業ほど市場価値が高まり、女性取締役がいる企業体のほうが利益が上がる傾向があり、女性の活用が投資判断の基準にもなっていることを紹介した。


★管理職に占める女性比率 (プロジェクター映像)


最後に男女ともに仕事も子育てもする時代が到来している、人の能力にジェンダーや国籍は関係ないとの結論をもって基調講演を終えられた。


2部: 基調講演に続いてのパネルディスカッション

2部は馬越先生に加え、株式会社三菱総合研究所、採用育成グループ参事で担当部長の武内志穂さん(1985年文学部心理学科卒)と元日本航空キャビンアテンダントで現在、HSBCジャパン輸出入部シニアスペシャリストの新田佳世さん(2007年外国語学部英語学科卒)が加わった。お二人は共に子育てをしながらキャリアを積んでこられており、体験に基づく生きた話をお聞きすることができた。


★武内さん、新田さん(右から)

主なディスカッションは以下の通り。

「子育てとの両立について」

武内さんのお子さんは2人、もう大学生になるが、上司の理解もあり2回の育児休職を取得し復帰した。一時期、夫が海外駐在になり育児・家事の協力が得られなくなったときにはハウスキーパー、ベビーシッターのようなアウトソーシングの取り入れで楽になったこと、また、子供と接する時間が短くてもコミュニケーションの質が重要だと思うと体験を通してアドバイスされた。
新田さんは去年の7月に職場復帰し、子育てしながらの仕事はまだ1年。試行錯誤が続く毎日と朝から夜までの一日を紹介された。


★武内さん


専業主婦の道は考えなかった?

武内さんは仕事の面白さは持続したが、会社が求める成果との折り合いでは考えたこともあった。
新田さんは自分のやっていることは正しいのかと自問自答することはあるが、一度、キャリアから降りると再就職は難しく、やめはしない。


★新田さん



馬越先生から参加者からの質問を中心に進めようとの提案があり、参加者から活発な質問が寄せられた。質問とパネリストのやり取り要旨は以下の通り。

Q.男性上司、トップマネジメントの理解が大事と思うがどうか?

・世の中が女性の活用を求めているが、組織における推進はトップの理解・行動が不可
 欠。
 まだ、温度差を感じる。個々の就業継続には上司の理解が非常に重要。組織内のプロモ
 ーションではメンターより力をもったスポンサーが大事。(武内さん)

・CA時代は女性が多く、育児休暇も取りやすかった。現在の会社も外資系企業のため理
 解はある。気持ちはあっても体制は整っていない現状もある。(新田さん)

Q.お子さんが保育園でどう過ごしているかご存知ですか?ダイバーシティのためには保
育園の充実が大事と思うがどう考える?

・民間の保育園に預けているが、子供へのメリットもある。規模が小さかったりするが、
・カリキュラムでは外国人の先生とのコミュニケーションや栄養士による給食など。
 (新田さん)

Q.子育てと仕事の両立で、どうすれば両立できるか、行政はどうすべきか?

・かつてはフルタイムなら保育園に入ることはできたが、待機児童の問題が顕在化して
 いる。質の高い保育を行うところが数多くあるといい。企業内保育園は通勤時に連れ
 て行くことはハードルが高い。近くの保育園に迎えにいける就業環境になることが大
 事。(武内さん)
・多少コストはかかっても安全で環境のよい質の高い保育園が欲しい。(新田さん)

Q.現役の学生からは「勇気をもらった。子育てしながらの仕事でのよかったことは?学生だった頃、ワークライフバランスや子育て両立の将来設計を考えていたか?」

・自分を褒めてあげたいのは子供を生んで一生懸命育てたこと。もちろんいろいろな人
 のお世話になってこそできた。親のありがたみがよく分かった。将来設計 そのとき
 に一番いい選択をすることが大事、柔軟性を持って対応すること。(武内さん)
・子供は宝物、それを得たことが大きい。社会人としては未熟、子供ができてバランス
 がとれて、仕事だけでなく、いい方向になっていると思う。ママ友との情報交換は企
 業の整備格差などが見えてくる。就職でどの企業を選ぶか、子供を生むことは学生時
 代考えていなかった。(新田さん)

Q.ご主人とご両親はキャリアにどういう影響を与えたか?

・働きすぎることに難色をしめすかと思ったが両親、主人とも前向きに協力してくれた。
 非常に感謝している。(武内さん)
  夫は意見を尊重してくれて、家事なども精一杯してくれている 気持ちと誠意は伝わ
 ってくる。両親も任せてくれている。両親の直接の助けは得られないが家事、掃除な
 どでのアウトソースはほんとに助かる。(新田さん)

このほか、現在、ソフィア会はソフィア・ネクスト100プロジェクトという委員会をス
タートさせた。この中では女性によるネットワークであるソフィア・ウーマンネットワー
クを立ち上げている。こうしたネットワークの活用していただければとのPRも寄せられた。

活発な質問で女性が社会で活躍するための課題がさらに明確になった。
馬越先生は「この講演会は4回あるので、敢えて今日の結論は申し上げません。是非、次回も参加を」と締めくくられ、会場からは充実したディスカッションに大きな拍手が送られた。


講演会、大きな拍手で幕

懇親会の模様

懇親会:講演会・パネルディスカッションに続いて、紀尾井坂ビルに場所を移し、懇親会が盛会のうちに催された。
冒頭、高祖理事長、早下学長からご挨拶いただき、ソフィア経済人倶楽部の戸川専務理事による乾杯の音頭で懇親会の幕が開いた。


高祖理事長




早下学長と司会の上原理事(左から)




馬越さん、武内さん、新田さん(右から)

 
馬越先生がワインのエチケットに


講演会・パネルディスカッション 登壇者プロフィール

講師・ファシリテーター 馬越 恵美子 様

上智大学外国語学部フランス語学科卒
経済学修士(慶應義塾大学)。博士(学術)(東亜大学)
同時通訳、東京純心女子大学教授、NHKラジオ講師
東京都労働委員会公益委員を経て、現在、
桜美林大学経済経営学系教授・筑波大学客員教授・異文化経営学会会長

二男を育てながら仕事を継続。現在は孫も2人いる。

著書: 「ダイバーシティ・マネジメントと異文化経営」(新評論)
「異文化経営論の展開」(学文社)
「NHKビジネス英会話・土曜サロン・ベストセレクション・プレミアム」(DHC)


パネリスト 武内 志穂 様

上智大学文学部心理学科卒
株式会社三菱総合研究所 入社(総務部事務システム開発室)
現在、同社グループ業務部 採用育成グループ 参事・担当部長
社員育成の人財育成企画・実施をメインに採用支援を行う。
社内のバーチャル組織 人事部 ダイバーシティキャリア推進室長(2008年)
土木学会 教育企画・人材育成委員会 ダイバーシティ推進小委員会委員(2010年)
日本産業カウンセリング学会所属
プロジェクトマネジメントプロフェッショナル(PMP)(米国PMI認定)
この間、二女を出産、2回の育児休職(育児勤務)を経験
     
パネリスト 新田 佳世 様

上智大学外国語学部英語学科卒
日本航空株式会社 フライトアテンダント
HSBC Japanに転職

現在、HSBC Japan 輸出入部シニアスペシャリスト
1歳の男の子を子育て中

以上

 

カテゴリ

  • 講演会・懇親会

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