「つくるI(キャリア形成I)」(12月11日)報告 ~二輪車の商品開発と世界ビジネス展開―開発者の視点から―~

 12月11日は、株式会社本田技術研究所水村栄氏 (機械工学科1975年卒業)が「二輪車の商品開発と世界ビジネス展開―開発者の視点から―」というテーマで講義を行いました。

 最初に、ホンダの二輪車は昨年全世界で1600万台を超える販売実績がありながら、国内で生産された数は1%に満たないことが紹介されました。講義のキーワードは「グローバル化」と「もの造り」です。その象徴的な商品として、スーパーカブが「形状だけで識別できるほど独自性が高い」と認められ、その形状が立体商標として登録されたことも紹介されました。

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 以下に講義の概要を紹介します。

1.二輪車の市場概況
 二輪普及率は1人あたりのGDPと相関関係にあります。1000ドルを超える頃から急速に二輪車が普及し始め(NEXT市場)、5000〜1万ドルの基幹市場では二輪車が最も売れ、それ以上の先進国市場では二輪車より四輪車の需要が増えていくことなどが、それぞれの国の特徴とともに紹介しました。
 また、マーケット別に特徴をもつ二輪車機種群とや、先進国メーカーと進展国メーカー間の提携がすすむ二輪関連企業の相関関係なども紹介しました。

 

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2.Honda二輪のグローバル化の歴史と現状
 S(Sales、Service:販売、アフターサービス)、E(Engineering:生産・製造)、D(Development:商品開発)の視点で海外展開していますが、現在ではホンダ製品を販売しているのは165カ国、二輪車製造は21カ国30工場、二輪車研究所は10カ国14研究所に上ると紹介しました。

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3.商品企画から開発まで
 商品企画では、マーケットイン(ユーザーの要望や市場のニーズを正しく把握しそれに応える、競合する商品に対する競争力を与える、社会からのニーズや方向性を取り込む)と、プロダクトアウト(期待を超える新機能・新技術・新デザイン等を技術屋が蓄えた知識を発揮して実現する)の両輪をうまくバランスさせる必要があると説明しました。
 海外でのマーケティングの実例の紹介の後、ホンダ独特の研究開発体制の概要や品質工学にも話が及びました。
 またHGA(二輪R&Dセンター)では新技術・コア機種の開発をすすめ、海外の研究所ではそれぞれの市場ニーズにあったラインアップの提案や現地向け派生機種の開発などの役割分担をして、開発の効率とスピードを求めた連係をすすめています。

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4.開発へのこだわり
 創業者本田宗一郎の肉声のテープで、ホンダに受け継がれる以下の「開発へのこだわり」が紹介されました。
・技術を持って人の役に立ち、大衆に受け入れられる商品へのこだわり
・使っていただいてお客様に迷惑をかけない品質へのこだわり
・すべての人に平等に与えられているのが時間。二輪は特にスピードにこだわる
・開発を通じて、世界に通用する人材育成へのこだわり

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5.海外で生産するということ
 二輪車の造り方や海外工場での作業風景、アジア主要国の賃金比較を紹介したあと、海外工場への生産技術移転として、「完成車組立」の現地化、「部品製造」の現地化、「生産設備」の現地化、「生産技術開発」の現地化の4つのステップについて説明しました。その地域のニーズとシーズを見極めて移転していく技術と内容を決めています。
 また日本ではJIS規格で標準化されているのに対し、海外ではそれぞれの地域で規格が異なります。膨大な図面を現地化する作業をしています。さらに、製造拠点や部品メーカーの違いで、製造法案を現地化する作業も必要となります。このような地道な作業の積み重ねで廉価で安定した品質につながるのです。逆に言えば設計者や開発者の腕の見せ所との説明もありました。
 海外の人材活用も重要です。オールホンダで9万2千人のうち、日本人は6千人、海外の人材は93%の8万6千人にのぼります。言語・宗教・文化などの違いを超えて海外人材を活かすために、社是の共有、チームワーク、リーダー格の日本での研修、全員での日々の改善活動が行われています。

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6.海外でビジネスをするということ
 企業ブランドの確立や知的財産の確保に向けて、特許権・意匠権・商標権など知的財産制度(所有権)の活用が重要となります。初代スーパーカブ(1958年)の自動遠心クラッチ技術を日本で特許出願しながら、海外では出願しなかったため、特許出願をした外国会社にライセンス許諾料を支払うことになってしまったことがあります。それ以降、外国への特許出願も積極的に行っています。特許出願件数(全世界合計)は年間7600件、積極的に外国出願を実施しています。特許は各国で独立した権利のため、権利行使するためにはその国ごとに出願が必要です。
 さらに海外ビジネスにおいては、各国法規、各国国税、ビジネスパートナーとの関係、経済状況や国策、宗教や習慣の違い、免許や保険制度の違い、政治情勢など様々なリスクも考慮しなければならないと説明しました。

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7.更なるお客様の喜びに向けて
 今後のNEXT市場への対応や、早回しを目指す品質改善サイクル、交通安全への取り組みなども紹介されました。

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 最後に、これからグローバルなモノづくりを志す学生に対し、期待を込めた以下の言葉で講義を締めくくりました。

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水村講師

写真など

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