「会員の広場」第9回 平田賢典(1987・化学卒)

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〔投稿者〕 平田賢典(1987年化学卒):理工学部同窓会理事

「ワークライフバランスと美しい表現を教えてくれた小椋佳」

 若い時にお世話になった上司からいただいた今年の年賀状に「今年は仕事の締めくくりにする」旨の言葉が書かれていた。私がその上司とご一緒に仕事をさせていただいたのは、今から約30年前のことである。当時、私は第一勧業銀行(現 みずほ銀行)の浜松支店で勤務しており、神田紘爾氏が支店長であった。みなさんには、「シクラメンのかほり」「愛燦々」「夢芝居」などの作品で知られるシンガーソングライターの小椋佳氏といった方がわかりやすいであろう。
 いまでこそ、働き方改革、ワークライフバランスという言葉を耳にする機会が多くなったが、当時は栄養ドリンクのCMで「24時間働けますか」というキャッチコピーが流行っていた。神田支店長は、仕事には厳しいが極めて温厚でめったに怒ることのない方であった。しかし、そんな支店長が一度だけ職場で大声をあげられたことがある。それは、銀行で決められた定時退社の日に定時を5分過ぎているにも関わらず誰も退社しようとしなかった時である。「今日は定時退社の日だと決まっているのだからきちんと仕事を終えて定時に帰りなさい」と大声で怒られた。「24時間働けますか」が美徳とされた時期にその場にいた誰もがびっくりしたものである。

 神田支店長は、平日の日中は銀行員として、プライベートタイムは小椋佳として活動することを長年続けられてきた方で、浜松支店の部下に対してもプライベートタイムを大切にすることを教えてくださった。当時、定時の午後5時に退社をすると夏場であれば午後7時くらいまでテニスをしたりゴルフのショートコースをラウンドすることができた。それからさらにボーリングに出かけ、それから酒席を設けてもまだ余裕がある、そんな充実したアフターファイブを過ごすことができた。まだまだ、ワークライフバランスなど夢のまた夢と思われていた時代に大変大切なことを教えていただいたと感謝している。
 当時の浜松支店のスローガンは「恥じない仕事ぶり、悔いない暮らしぶり」という言葉であった。常に顧客や職場の仲間に恥ずかしい仕事をしてはいけない、つまり最善の仕事をしよう!、しかし日々の暮らしを顧みず悔いを残す暮らしぶりをしてはいけないということで、まさにワークライフバランスを30年前に実践していたわけである。
 もう一つ、私が神田支店長から学んだことは、美しい表現、日本語表現へのこだわりということである。
 浜松支店から異動してから退職するまでは、銀行のシンクタンクで調査研究に関わってきたが、その仕事を通じて多くの文章を書く機会があった。調査レポートは、もちろん文学作品でなく正確に事実を伝えることを目的としているのであるが、言語表現一つで読み手への微妙なニュアンスの伝わり方が変わってくる。当時の経験や価値観は様々な場面で私の仕事を支えてきた。
 今年、神田元支店長から今年で小椋佳としての活動を締めくくるとの年賀状をいただき、神田元支店長と小椋佳氏のお二人に改めて感謝の気持ちを表したい。

写真など

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